レナウンPhoto:JIJI

民事再生手続き中のアパレル名門レナウンが、難航していた事業譲渡を8月20、21日と立て続けに発表した。事業譲渡したのは肌着製造子会社のレナウンインクスと、「Aquascutum(アクアスキュータム)」「D'URBAN(ダーバン)」など主力ブランドのみ。残る「arnold palmer timeless(アーノルドパーマータイムレス)など、一世を風靡(ふうび)しながら消費者への訴求力を失ったブランドは今後、撤退や消滅する運命となった。事業譲渡が終了すると、かつて日本のアパレル業界のトップリーダーとして君臨した「レナウン」は清算され、100年を超える歴史に幕を下ろす。レナウン破綻の真相に、東京商工リサーチ(TSR)情報部が迫った。(東京商工リサーチ情報部 後藤賢治)

民事再生をめぐり
取締役会が紛糾

 レナウンの倒産は、最初から違和感が漂っていた。東京地裁に民事再生法を申請したのが本体でなく、子会社の保険代理業レナウンエージェンシーだったからだ。

 子会社が親会社に法的手続きを申し立てるという異例の事態の裏側に、50%以上の株式を保有する中国の親会社・山東如意科技集団有限公司(以下、山東如意)との対立が透けて見えた。レナウンの民事再生法の経緯を知る関係者の一人は、「民事再生の申請はレナウン本体のほか、子会社が債権者として申請するなど、数パターンを準備していた」と語る。

 東証1部に株式上場していたレナウンは、今回の法的手続きを極秘裏に裁判所と事前調整し、5月15日に民事再生法の適用を申請する計画だった。TSRにも事前情報は入っていたが、上場会社だけに情報管理を徹底し、株式市場が閉まる15時以降の適時開示に注目していた。

 5月15日当日。レナウンは取締役会を開催し、民事再生法の適用申請の決議が起案された。だが、取締役会で決議が紛糾した。