これは大企業のトップと長年仕事をしてきたことでいろいろなものを見てしまった、わたしの実体験からの学びです。公式発表が明らかにおかしい場合には、必ず裏の事情があります。

「ああ、わかってるよ。オリンピックだろう」という指摘は間違っていないのですが、実は問題はもうちょっと闇が深い。今回はその話をしたいと思います。

政府の過剰な自粛は
「経済」「国民の私権」を無視している

 いま、この原稿を書いている段階で緊急事態宣言は沖縄県を除き6月20日に解除する方向になりそうです。報道によれば宣言を解除したうえで、まん延防止等重点措置を適用します。「飲食店でのお酒の提供は19時まで」と禁止から制限へと移行する見通しです。

 一応お酒は飲めるようになるのですが、定時に帰るサラリーマンが「一杯やっていこう」といっても時間は正味一時間だけ。フレンチでコース料理を楽しむにも飲めるのは食前酒までで、前菜が提供される頃にはソフトドリンクしか飲めません。飲食店にとっては相変わらず稼ぎ頭が制限された状況が続きます。しかも政府の決定には「知事の判断で禁止措置も可能」とあるので東京と大阪の事業者は気を抜くことができません。

 ちなみに、東京都での感染はもう収束段階に入り、東京都のコロナ対応ベッド使用率は26%、重症者対応ベット使用率は35%まで落ちてきています。もともとは医療崩壊を起こさないために求められてきた自粛が、当初の指標を無視して延長される。もう一歩踏み込んでいえば、経済への悪影響と憲法の条文を無視してまで、われわれ都民の私権が制限されている。

 この問題を考えるポイントは「どこで国民と政府との間に見解の相違が発生しているのか?」です。わたしはこの連載で何度もコロナについて取り上げています。それらの記事でのわたしの見解は、以下の五つです。

(1)医療崩壊を抑え、将来の死亡者数の減少を目指すことが大切
(2)一方で緊急事態宣言は一週間で日本経済に約1.2兆円規模の停滞をもたらす。(1)の目標が達成できている状況では経済を止めるべきではない
(3)新型コロナで死者数をおさえるための最大のポイントは高齢者のワクチン接種。死者の95%は60代以上なので、高齢者層のワクチン接種が終わればコロナ禍は10分の1以下に収まる
(4)オリンピック開催都市に立候補した段階で、東京は世界のアスリートのためにオリンピックを開催する義務がある。安全な形で実施すべきだ
(5)飲食店での酒類提供がコロナまん延の犯人だとは判明していない。過剰な私権制約は経済のためにも国民の自由の視点からもすべきではない

 読者のみなさんとわたしとではひょっとすると(4)の見解が違うかもしれません。一方で都や国の発言を見る限り、我が国の指導層の方々は(1)(3)(4)については、わたしと見解の相違はなさそうです。でも、(2)と(5)についてわたしとは見解が異なる様子です。

 資本主義・自由主義を掲げる日本の指導者である以上、「経済活動の自由」「国民の自由」は厳守するべき鉄の掟です。それなのに、なぜ飲酒の自由の優先度が下がっているのでしょうか?