電子決済サービスが急激に普及しており、もはや電子マネーは個人の資産と言っても過言ではない状況だ。しかし、万が一利用者が死亡した場合、それは遺産として認められるのだろうか。その問いに答えるかのように、今年1月に日本最大級のQR・バーコード決済サービス「PayPay」の残高利用規約が改定され、遺族の相続が可能となった。本稿ではデジタル遺産を巡る深刻な現状や対策について概括していく。(フリーライター Sayah)
便利であるが故に陥る
電子マネーの落とし穴
キャッシュレス化の波を受け、世界中で普及が加速している電子決済サービス。クレジットカードと比べて、登録情報入力後にすぐ使える手軽さ、現金を持ち歩かなくてもスマホで簡単に決済ができる身軽さ、チャージした金額の範囲内で商品やサービスの購入ができる安心感などで、日本国内でも近年人気を博している。
しかし、そんな便利な半面、日本では比較的歴史が浅いこともあり、デジタル資産としてのガイドラインの整備が十分でないといった側面も見られる。電子マネー利用者が死亡した際に、残高がゼロとなってしまうサービスや、死亡時のガイドラインが明確に整備されていないサービスも少なくない。
例えば、セブン&アイ・ホールディングスが発行する流通系電子マネー「nanaco(ナナコ)」の会員規約には、利用者の死亡時には残高が失効し、現金による払い戻しにも非対応である旨が、はっきりと明記されている。
出典:nanaco/会員規約
これは、もしも故人がnanacoの上限額である5万円をチャージしていた場合、故人が死亡した時点でチャージ額が全額無効になってしまうということを示している。無論、遺族はその5万円を相続することができない。