新型コロナ克服へ向かう中、経済指標は過渡的に無意味に振れ、株式などリスク資産市場は金融相場の変化に対して神経質に右往左往している。相場が方向感を失うと、メディアや情報リーダーたちの言葉は先鋭化し、単純明快な「相場テーマ」に流れ、相場において自己実現の展開もそこかしこに生じやすい。ワクチン相場、リフレ相場の裏を読み解き、投資家の臨み方を考える。(田中泰輔リサーチ代表 楽天証券グローバルマクロ・アドバイザー 田中泰輔)
情報アクセスが容易になった個人の
参入で相場の反応は素直になった?
コロナ禍を通じて、個人投資家が株式などリスク資産市場に大挙して参入したことで、相場の動き方にも変化を感じる。ネット時代で、個人も一昔前のプロ級の情報・分析に容易にアクセスでき、高い機動性を持つ。
それでいて、投資家として大勢は発展途上、むしろ初期ステージにいる。そのため、市場の政治・政策、経済指標などのニュースに、ヘッドラインの一次解釈的な反応を素直に見せる面がある。
1990年代後半には、ITの進化を先取りして、欧米のグローバル金融機関は巨額のシステム投資をし、情報力の優位を激しく競った。市場のニュース情報の織り込み方は、プロ同士のせめぎ合いを通じて「煮詰まっていく」のを感じたものだ。相場の反応は必ずしもニュースの一次解釈と整合せず、情報の何がどう織り込まれて生じる相場動意かを解析した。
当時と比べると、昨今のニュースに対する相場の一次反応は素直になった感がある。それだけなら、個人投資家がプロの手玉にとられておしまいと思えるかもしれない。しかし、個人はSNS等を通じて集団化したり、時にプロの投資ポジションを攻撃の標的にしたり、プロ対個人、相場対個人の相場には新しい構図も生じている。