日本を襲う米国住宅バブル「再来と崩壊」はあるか足元の米住宅市場の上昇がバブルならば日本のマンション価格急落の可能性もあるが... Photo:AP/AFLO

 前編「マンション投資の黄金時代は終焉か、渋々の価格上昇で薄れる妙味」6月11日掲載)では2020年のコロナ不況下にもかかわらず上昇を続ける東京のマンション価格について、投資家目線でかつ国内要因に絞って読み解いた。

 結論としてリーマンショック後の2009年やミニ景気後退期だった2012年のようなマンション価格の下落が、コロナ不況下で起こっていないのは、(1)財政・金融政策総動員による失業率の抑制と改善、(2)中古マンション在庫率の低下、(3)代替・競合資産としての株価の上昇に支えられていると分かった。

 そして株価要因についても企業利益の回復で日経平均株価指数の予想PER(株価収益率)が14倍台に下がった今、株価のバブル崩壊的下落に連れたマンション価格下落の可能性もありそうにないと述べた。後編ではさらに2つの視点からマンション価格の上昇を考えてみよう。

居住所有者目線で見たマンション価格

 まず近年の価格上昇を、居住目的の所有者(居住所有者)目線で見るとどうだろうか。賃金所得の伸び率が低い中で、マンション価格の上昇が続き、購入価格が1980年代末のバブル期のように購入者の年間所得の10倍以上にもなれば、買いたくても手が出なくなる。

 だが購入可能価格は所得の伸びだけでなく、住宅ローンの金利水準にも大きく左右される。例えば5000万円の住宅ローンを35年間で元利均等返済する場合、金利が2.0%ならば返済元利金総額は6957万円だが、金利1.0%ならば5928万円で、その差は1029万円に及ぶ。他の条件が同じなら、その分だけ高いマンションが買えることになる。

 この点については三井住友トラスト基礎研究所の馬場高志氏が、2009年以降の(1)首都圏一般世帯の平均年収の増加、(2)購入時点の住宅ローン金利水準の低下、(3)住宅ローン減税制度による負担軽減効果の3つの要因で、居住所有者の「支払可能価格」の変化を推計している(文末の補注1)。