税務調査キホンのキ写真はイメージです Photo:PIXTA

「デジタル改革関連法」が4月6日に衆院本会議で可決、5月12日に参院本会議で可決・成立した。行政のデジタル化に伴い、マイナンバー(個人番号)カードと健康保険証などの身分証明書との一体化、預貯金口座とのひも付けも推し進められる。……となると、気になるのは、今後の「税務調査」のあり方だ。(税理士、岡野雄志税理士事務所所長 岡野雄志)

マイナンバーと金融機関口座のひも付けで
国税庁・税務署の税務調査が進む!?

 つい先頃まで、国税局と税務署のオンライン化は難しいとされてきた。個人情報保護や守秘義務の観点から、税務調査官はメール、ファクスでさえ使用できなかった。それが、デジタル化推進により、マイナンバーと預貯金口座がひも付けされれば、一気に強化・スピード化されるのではと言われている。

 現状、国税局や税務署の金融機関への照会手段は対面もしくは郵送で、すべて紙ベースである。相続税の税務調査は「預貯金に始まり、預貯金に終わる」といわれるほど、預貯金口座の入出金履歴を細かく調べ上げる。時には10年前、20年前までさかのぼり、不審な入出金があれば出金伝票のチェックにも及ぶ。

 この作業は、目視によって行われる。被相続人(財産を残して亡くなった方)の取引金融機関が複数だったり、名義預金()の疑いがあったりすれば、調査に手間も時間もかかる。マイナンバーと口座がひも付けられれば、国税庁・税務署にとっても、金融機関にとっても、事務作業は格段に効率化するはずだ。

※口座名義人と実際に預金している人が異なる預金のこと。

 冒頭、国税局と税務署のオンライン化は困難という話をしたが、すでに実施されている部分もある。「国税総合管理(KSK)システム」をご存じだろうか。全国の国税局と税務署をネットワークで結び、申告・納税実績などの情報を一元管理するシステムだ。平成7(1995)年から一部地域で試行され、平成13(2001)年から全国的に運用されている。

 また、国税当局は、納税者の預貯金口座データ等をデジタル化して入手できるよう、NTTデータと提携し、実証実験を昨年10月からスタート済みとの情報もある。照会手続きがペーパーレス化されれば、書類準備や郵送に要していた日数が短縮できる。

 マイナンバー制度は平成28(2016)年1月から開始されているので、すでに税務署へ提出する申告書にはマイナンバーを記入することになっている。法人の場合は、13桁の法人番号を記入する。また、金融機関でも投資信託の口座開設や外国送金などの際、マイナンバー告知が求められる。法人が定期預金の口座開設等を行う際は、法人番号を届け出る。

 平成27(2015)年に改正され、平成30(2018)年に施行された「預貯金付番制度」で、金融機関が預金者情報をマイナンバーとひも付けて管理することが義務付けられた。ただし、金融機関への義務化であり、預金者には義務付けられてはいない。つまり、今のところ、金融機関にマイナンバー告知を求められても我々は拒否できるのである。