バイデン米政権はしばしば、前政権の決定をことごとく否定したがっているように見える。気候変動抑制のためのパリ協定、イラン核合意への対応を見ればそれが分かる。しかし、中距離核戦力(INF)全廃条約から離脱するという2019年のトランプ前大統領の決断に関しては、それを受け入れ、活用しようという超党派のコンセンサスが形成されつつある。これは、米国の安全保障にとって朗報だ。  1987年に米国とソ連の間で調印されたINF条約は、冷戦の終結を目指したものだった。しかし、同条約はその後、主として中国を利する面が大きくなっていった。