業績 再編 給与 5年後の業界地図#2Photo:Prisma by Dukas/gettyimages

アベノミクス以降は不動産マーケットが強く、中古ビルの転売で荒稼ぎしたヒューリックや、都心周辺で狭小戸建てを売りまくったオープンハウスなどリスクを取った企業が業績を大きく伸ばした。だが、都心オフィスの空室率上昇や、在宅勤務の増加などコロナ禍で事業環境は大きく変化している。特集『業績 再編 給与 5年後の業界地図』(全16回)の#2では、不動産・住宅分野のアナリストランキング1位の田澤淳一氏(SMBC日興証券シニアアナリスト)が今後5年間の見通しを分析する。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)

オープンハウスやヒューリックが伸びて
財閥系の三菱地所、三井不動産が低迷

「潤沢なストック(土地や建物)を軸に手堅く稼ぐか、リスクを取って転売でもうけるか」――。不動産セクターの時価総額上位10社を見ると、大きく二つに分類できる。

 前者の代表例が三菱地所や三井不動産に代表される財閥系の不動産会社だ。例えば、三菱地所であれば東京・丸の内の超一等地の不動産というストックを生かして、インフラ企業のように手堅く稼ぐ。

 三井不動産も東京の日本橋や日比谷といった好立地を保有している。住友不動産は2社と違い、地盤があったわけではないが、財閥系のメリットを活用しながら、バブル期以降に新宿や六本木に攻め込んで、今の地位を築いた。

 不動産価格や賃料は景気の影響を受けるものの、好立地を押さえて牙城を築くと、強い地盤を維持しやすい。財閥系不動産は平均年収も1000万円以上と高く、不動産業界の頂点に君臨している。

 ただし、アベノミクス以降に業績や時価総額を大きく伸ばしたのは、積極的にリスクを取った企業だ。

 SMBC日興証券シニアアナリストの田澤淳一氏はこう指摘する。

「アベノミクス以降は不動産マーケットが強いにもかかわらず、財閥系不動産の株価はTOPIX(東証株価指数)を下回りました。一方、リスクを取った企業は業績や株価を大きく伸ばしました。中古ビルの転売で稼いだヒューリックや、都心周辺の3階建て住宅で一気に業績を伸ばしたオープンハウスが代表企業です」

 平時は「資産がある企業」が有利だが、金融危機後のボトムからアベノミクス相場という不動産市況が強い中では新興プレーヤーが伸びやすい状況だった。オープンハウスは戸建て、ヒューリックは中古ビルとフィールドは違うが、「回転売買」に強いという点も共通点である。資産が蓄積されないため、ROE(自己資本利益率)が高くなりやすく、市場からも評価されやすい。

 ROEは当期純利益÷自己資本×100で算出する。三井不動産や三菱地所も利益は伸ばしているが、稼いでいない開発中の案件など資産も積み上がっているためROEが向上しにくい。

「利益成長の差もありますが、それ以上にROEの違いで株価に差がつきました」(田澤氏)

 では、これから5年間の不動産セクターはどうなるのか。引き続き、新興プレーヤーが快進撃を続けるのか、財閥系が巻き返すのか。気になる年収比較も併せて、次ページから5年後の業界未来図(下はサンプル)とともに、解説していこう。

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