ハーバードの渋沢栄一研究第一人者が語る「もしコロナ禍の日本に渋沢がいたら」深谷市にある渋沢栄一の生家と銅像 Photo:PIXTA

ハーバードビジネススクールのジェフリー・ジョーンズ教授は、アメリカにおける渋沢栄一研究の第一人者である。コロナ禍の2020年には、渋沢の起業家精神をテーマにした教材を出版した。今、渋沢が日本で再評価されるのはなぜか。岩崎弥太郎と渋沢栄一、ハーバードの学生も関心を寄せる2人の日本人起業家の違いとは。(聞き手/作家・コンサルタント 佐藤智恵)

渋沢栄一が再評価されている
二つの理由とは?

佐藤 NHKの大河ドラマ「青天を衝け」の放送開始を機に、日本では渋沢栄一がにわかに注目を集めています。なぜいま、日本で渋沢が再評価されているのでしょうか。

ジョーンズ 渋沢栄一が再評価されている理由は二つあると思います。一つは、2007〜2009年の世界金融危機を機に、日本でも資本主義のあり方を見直す機運が高まったことです。

 日本のメディアで「渋沢栄一」が取り上げられた回数の推移を見てみると、2009年ごろから急増しています。このことからも世界金融危機が渋沢に再注目するきっかけを与えたことが分かります。

 この現象は日本だけにとどまりません。世界中の人々が、世界金融危機の後、「株主価値の最大化を追求する資本主義」には重大な欠陥があることを実感し、新たな資本主義を模索するようになりました。

 渋沢は理想的な経済システムとして「合本主義」を提唱しましたが、これを広義にとらえれば、「株主価値よりも社会価値の追求を目指す資本主義」と解釈することもできます。ですから、資本主義を見直す流れの中で、日本人が渋沢に目を向けたのは自然なことです。