ラウンジか飛行機でしか食べられないという新たな不満

 しばらくして、中国語の「東航那碗麺」と英語の「MU noodles」のブランドロゴも配信され、機内食を提供する東方航空食品は麺ボウル、エプロン、カップ、メモ帳などのグッズ商品を多数展開した。

 東方航空の麺がおいしい、それが食べたいと、東方航空を選ぶ乗客も増えた。やがて、機内食に適した麺製品も開発され、17年11月から、空の上でも東航那碗麺を食べられるようになった他、複数の地方の風土や食文化に合った麺類も登場した。同じ上海でも、虹橋空港と浦東空港のラウンジで提供される麺が異なるといったこだわりも見せるようになった。

 この機内食の麺は中国国内線から国際線へと展開し、北米路線など長距離国際路線へも広がった。

 2018年4月、東航那碗麺は中国航空業界メディアCAPSEが授与する「CAPSE2017イノベーションサービス賞」を受賞した。しかし、新しい不満も出てきた。

 東方航空の多くのファンは、「あの麺は有名だが、空港でVIPラウンジに入る資格がなければ食べられない。フライトでもたまにしか食べられない」と不満を隠さない。こうした不満を解消するために、18年12月、上海に東航那碗麺の地上1号店がオープンした。これで飛行機に乗らなくても食べられるようになった。

 わずか10カ月で、東航那碗麺は業界内から大衆へ、地上から空へ、中国から海外へとその影響力を広げたのだ。

 コロナ禍が終息し、また飛行機に乗って世界中を飛び回れるようになったら、私はあの東航那碗麺を食べるために、東方航空に乗りたい。

(作家・ジャーナリスト 莫 邦富)