「私たちが白書をつくることになったのは、ひきこもりの多様性について多くの方に知っていただき、ひきこもり像をアップデートしたいという思いからです。46万字に及ぶ自由記述には、北海道から沖縄県まで全国の当事者たちの切実な声が詰まっていました。中でも“安楽死”という言葉を10人以上の方が書かれていたのは衝撃でした。みんな、言葉にできない複雑な生きづらさを抱えて一生懸命生きようとしているのです」(UX会議・林恭子共同代表理事)

「ひきこもり」というと、「働いていないから働く気がないのではないか」「怠けているのではないか」というイメージを持たれがちだ。しかし白書では、現在就労していない909人(有効回答)に対し、過去の就労状況を複数回答で聞いたところ、「働いたことのない人は20.7%だけで、正社員や非正規雇用、自営業などとして就労経験のある人は約8割に上る」と指摘している。

「これから働きたいと思っている」と答えている人も約6割に上るなど、「ひきこもりしている人は全て働く意欲がない」というのは誤ったイメージであることも裏付けている。

 また、全ての対象者(有効回答1516人)に生きづらい状況が軽減、改善した変化について尋ねたところ、ここでも認識を改めるべき重要な示唆が得られた。「安心できる居場所が見つかったとき」と答えた人が全体の半数を超える50.3%と最も多く、「自己肯定感を獲得したとき」の45.8%、「こころの不調や病気が改善したとき」の44.9%がこれに続いた。一方で、従来の「ひきこもり支援」でゴールに設定されてきた「就職したとき」は、わずか18.3%。全ての選択肢の中で2番目に低かった。

 さらに、行政機関の支援サービス、ハローワークや地域若者サポートステーション(サポステ)などの就労支援サービス、民間団体の支援サービス、医療サービスを利用したことのある人のうち、課題を感じている人の割合は8~9割に達した。自由記述には、「支援者の理解不足」や「解決策不足」「選択肢のなさ」「利用へのハードル」などの声が多く寄せられた。従来から指摘されている「ひきこもり支援」の問題が改めて浮き彫りになった格好だ。