「ちゃんと見ていたよ」と伝えるだけで
子どもは十分うれしい
――さきほどのお話だと、算数とか数学って段階を積み重ねて難しくなるのであって、本来は学年によって決まっているわけではないですよね。そこで平均をとったって意味があるのかという話になりますね。
坪田 それでいうと、そもそもたった40人くらいのクラスで平均をとっても意味はないですよ。
てぃ 親御さんがすべてに関して難しく考えすぎているんだと思うんですよね。
「どうやって子どもをほめればいいですか?」って聞かれるんですけど、こういうほめ方はいい、ああいうほめ方は悪いって考えすぎる必要はなくて、基本的に子どもは自分を認めてくれればそれがいちばんうれしい。
じつは子どもが起こす行動には、だいたい4つの機能があるといわれているんです。
1つが「注意喚起機能」。2つ目が「逃避機能」。3つ目が「要求機能」。最後が「感覚欲求機能」です。
「感覚欲求機能」というのは、たとえばペン回しのように、なんとなく気持ちいいからやっちゃう行動。
「逃避機能」は怒られるからやるとか、逃げられるからやる行動。
「要求機能」は、おやつが食べられるから宿題をやる、というような、何かを得るための行動。
そして「注意喚起機能」というのは、子どもたちの行動の7~8割を占めるといわれていて、自分がやったことをきちんと見てほしいという、自分を認知してもらうための行動です。
だから、子どもが何かいいことをしていたら、ご褒美なんてあげなくても、「ママパパはちゃんと見てたよ」っていうのをそのまま伝えるだけで子どもは十分喜んでくれる。難しく考えすぎなくていいんです。
普段勉強しない子が宿題をしていたら、「じゃましないでおこう」って声をかけないようにするんじゃなくて、「宿題やってるね」って言ってあげたほうが、子どもは「ちゃんと見てくれてたんだ。明日もまたやろう」って思う。
だけどたまたま宿題をやっていたときに「じゃましないでおこう」ってなると、見てもらってないから結局次の日はやらない。だって、認めてもらってないから。だからほんと、子どものよい行動を増やしたかったら、「認める」というところだけを考えれば、とくに未就学児はいいんじゃないかなと思ってるんです。
――坪田先生の本には、学校でテストを返されたときに、親が点数についてどうこう言うのではなく、「本人に結果をどう思ったか聞いて、そのことに共感するとよい」とありましたね。
坪田 こっちがジャッジする必要ってないんですよね。親からみれば「90点すごいじゃん」って思っても、本人はめっちゃ勉強して100点のつもりだったのに90点で悔しいかもしれない。子どもは子どもで、先生との関係性で自分で評価しているかもしれないし、友だちと競争してるかもしれないし、自分なりにすごく努力したわりにダメだったなと思ってるかもしれない。観点はそれぞれ違うんですよね。
そういうときに「すごいね」って言われると「は?」ってなるんですよ。「全然わかってない」って。おもねる、おもねらないではなく、相手に聞くっていうのがいちばんシンプル。恋愛でもそうだと思うんですが、デートコースを必死に考えて決めたのに、小麦粉アレルギーの人をパスタ屋さん連れていってしまったみたいなことってあると思うんです。自分で考えるよりも「どういうのが好き?」「どこ行きたい?」って聞けばいちばんいい。
宿題をしている子どもに声をかけるときに「すごい!」とか「えらい!」と言う必要もなくて、「宿題してるんだね」ってふつうに言葉をかける。だけど親がよくやってしまいがちなのが、「もう終わったの?」とか「もう休憩?」と皮肉をいうこと。そうなると「二度とするか!」ってなりますよね(笑)。やっても文句を言われ、やらなくても文句を言われるんだったらやらないほうがいいですもんね。
てぃ 「がんばってるね」って、ひとこと言えばいいんですよね。
関東の保育園に勤める男性保育士
保育士として勤務するかたわら、その専門性を活かし、子育ての楽しさや子どもへの向き合い方などをメディアなどで発信。全国での講演は年間50回以上。
他園で保育内容へのアドバイスを行う「顧問保育士」など、保育士の活躍分野を広げる取り組みにも積極的に参加している。
ちょっと笑えて、かわいらしい子どもの日常についてのつぶやきが好評を博し、Twitterフォロワー数は50万人を超える。
著書である『ほぉ…、ここがちきゅうのほいくえんか。』(ベストセラーズ)は15万部を超える大人気作。コミックほか含め、著書は累計50万部を突破している。
ちなみに、名前の読み方は「T」先生。最近ではYouTubeに動画を投稿し始め、チャンネル登録者ははやくも25万人を超えている。
「人に迷惑をかけるな」「勉強しなさい」「やる気あるの?」。子育てをしていると、ついつい使ってしまう言葉ですが、実は心理学的に子どもにとって逆効果になっていることがあります。たとえば、「人に迷惑をかけるな」は海外で子育てには使われません。むしろ、「困っている人がいたら助けよう」という言葉のほうが強調されます。一方、「人に迷惑をかけるな」といわれると、自ら自粛してしまうように育ちます。だったら、どうしたらいいの?という疑問に、坪田先生が実例と心理学を用いて、グローバル時代・AI時代の子育てを解説します!