「完全に拍子抜け」「竜頭蛇尾とはこのことではないか」。
複数の自動車業界関係者がこう酷評するのは、去る6月9日、日産自動車が今年秋に発売すると改めて発表したクリーンディーゼル車「エクストレイル」である。
この日産のクリーンディーゼル車は、世界で最も厳しいと言われる米国のディーゼル排ガス規制の基準をクリアしているだけでなく、2009年度に日本で実施予定の厳しい排ガス規制にも対応したエンジンを搭載。これほどクリーン度の高いディーゼルエンジンの投入は、むろん、日本で初めてである。
それなのに、なぜ、冒頭のように酷評をされるのか。その理由は明白。当初の発売がマニュアル(MT)車に限定されるからである(AT車はいずれ発売の予定)。
「MT車では、意味がない」。他メーカーだけでなく、身内である日産系ディーラーからも非難の声が聞こえる。
周知の通り、日本市場では乗用車のオートマチック(AT)車の比率は9割を超え、日産車のMT車の比率も5%を切っているのが実情だ。最近の若年世代では、自動車免許もAT限定の取得者が増加傾向にある。かつてMT車で免許を取得した人でも「もうAT車しか運転できない」というドライバーは多い。
じつは、日産は昨年8月、他のメーカーに先んじて、クリーンディーゼル車を日本市場に投入すると発表、日産のディーラーやユーザーでは「いまか、いまか」と、その期待度は高まっていた。にもかかわらず、登場したのはMT車のみ。それだけにディーラー側の落胆ぶりは大きい。
ある販売店の営業マンは「昨年からクリーンディーゼル車の発売を楽しみにしていたお客さんに『MT車では妻が運転できない』と文句を言われてしまいました」と残念がる。販売台数も「せいぜい月100~200台も売れれば、御の字だろう」(業界関係者)と言われる。ちなみに、日産は6月18日現在、具体的な販売目標や価格などを明らかにしていない。