また、同年9月に開催された国連ワールドサミットでは、小泉純一郎首相(当時)がアフリカへのODAを3年間で倍にすると表明。そしてさらには、世界銀行とIMF(国際通貨基金)が、貧困国への債務550億ドル(当時のドル円レートで、約6兆円)相当を、債務帳消し、あるいは削減することが決まりました。

 つまり世界中で行われた「ホワイトバンドプロジェクト」は、世界の貧困に対する国民の関心を集めることで各国の政府にプレッシャーをかけ、貧しい国の人々のために1050億ドル分、当時の日本円にして約11兆円分の恩恵をもたらす一つの大きな力となったというわけです。

企業が持続可能な「社会に良いこと」を続けるために

 ホワイトバンドプロジェクトのキャンペーンは、サニーサイドアップとしては完全に赤字でした。当初は私たち社員の実働分の最低の賃金や交通費だけは実費としていただくつもりでしたが、ホワイトバンドの製作原価(工場に支払う分)と流通費だけをいただき、それ以外はすべて、貧困をなくすための活動費に回したからです。

 キャンペーンにのめり込み、600万人の方々にホワイトバンドをつけていただきましたが、私たちはそこで利益を取るどころか、マックスで何億円という借金を抱え、自転車操業していたのが現実でした。

 そうせざるをえなかった背景には、当時の日本の空気が大きく影響していました。「チャリティ=寄付」のイメージが強かったため、社会貢献や善い行いに「自己犠牲の精神」を求めてくる人が多かったのです。

 ここで一つ、強調させてください。企業がSDGsへの取り組みを行う場合、「自己犠牲」を掲げるべきではないと思います。自己犠牲はサステナブル(持続可能)ではないからです。

 ある問題に対してずっと本気で取り組む、応援するためには、その事業がサステナブル(持続可能)でなければなりません。100メートルダッシュのような筋肉の使い方で、フルマラソンは走りきれませんよね。自分の身を削らなければできないような活動は、サステナブルとは言えないでしょう。