今や日本中、いつでもどこでも手に入る椎茸ですが、一般に食べられるようになったのは、意外にも江戸時代からです。

 我が国の原産品で、9世紀にはすでに中国から干し椎茸の製法が伝わっていたにもかかわらず、食用がこんなに遅れた理由とは――?

椎茸にゅうめん
【材料】そうめん…1~2束/椎茸の旨煮…1個/梅干し…1個/三つ葉…適量/出汁…2カップ(400ml)/酒…大さじ1/みりん…大さじ1/塩…小さじ1/2/醤油…大さじ1
【作り方】 ①出汁を沸かし、酒、みりん、塩、醤油を入れて温めておく。②そうめんを茹でて器に盛り、1をかけて1.5mm幅に切った椎茸の旨煮、梅干し、三つ葉を乗せる。
器提供:漆屋くろえ

 それは“干し椎茸が高く売れた” からです。

 乾物使いに長けた中国では、干し椎茸は欠かせない食材の一つでした。

 なかでも日本産の椎茸は味が良く、中国で珍重されたようです。

 ところが、当時の日本は自然発生した野生の椎茸を加工するしかなく、数に限りがあるため、重要な輸出品である干し椎茸を国内で消費する余裕はありませんでした。

 アニメ『一休さん』でおなじみの蜷川新右衛門《にながわしんえもん》が書いた日記に、1465年、伊豆の円城寺から、室町幕府の八代将軍・足利義政に干し椎茸が献上されたことが記されています。

 また、豊臣秀吉の好物であったことからも、椎茸は上層階級でしか食べることができず、江戸時代に椎茸の栽培が始まって以降、やっと庶民にも手が届く食材になったというわけです。