駅直結1分の価値

 東京メトロや都営地下鉄月島駅直結の「キャピタルゲートプレイス ザ・タワー」というマンションがある。駅の地下1階からエレベータでエントランスフロアに上がり、自分の居住階のエレベータに乗り換える、駅直結物件だ。

 これを売り出した時は、マンションの売れ行きが現在のように良くなかった。申し込めば、抽選にはなるものの、買える確率は高かった。私の助言通り投資をしてくれるクライアントにこの物件の最上階の北西向きを4戸まとめ買いしてもらった。その際の推奨の仕方は、こうだ。

「駅直結1分のマンションは過去に7物件しかなく、すべての物件が値上がりし、その平均値上がり率は55.3%です。月島の中でも、この物件が駅直結なのでピン立地であることは疑いようがなく、これを坪330万円で買えるなら、買えるだけ買ってください。ちなみに、間取りは柱が目立ってひどいですが、資産性には関係ないので、気にしないでください」

 この物件は、その後50%値上がりし、現在坪500万円以上で取引されている。

 2028年には、築40年以上のマンションは198万戸に増える。増加の一途をたどる老朽化マンションに対して、建て替えは一向に進まない状況にあった。そこで「マンション建替え円滑化法」が施行されたのは、2002年のことである。

 しかし、この法律の効果は限定的だった。それまでに建て替えできた物件は、そのほとんどで未消化の容積が存在していた。容積とは、土地面積に対して、造っていい床面積を指す。それは、建て替えると床面積が増えることを意味している。増えた床面積は、建て替え後に売却することで建て替え費用を賄うことができた。事業収支がプラスだからこそ、建て替えられたのである。