法改正の背景には災害が

 建て替え予備軍となる物件の入居者は高齢者が多い。自力で建築代金を支払うことができないだけでなく、80歳に完済を求められる住宅ローンでは資金負担のめどすら立たない。入居者が資金を出さずに建て替えるのに、余った容積は救世主なのである。

 そこで、2014年に法律が改正される。背景には、2011年の東日本大震災の甚大な被害がある。日本の建築関連の法律の歴史は、震災の歴史でもある。大きな震災があると、問題意識が変わり、法律が変わるのだ。

 老朽化したマンションを放置はできない。建て替えの原資を与えるには、容積率の緩和しかない。だからこそ改正内容は、このままの状態で立っていては困る建物は、容積率を緩和しやすくなった。2014年と2020年に緩和要件が拡大している。

 こうして、築古マンションの建て替えが進むことになる。従前と比べて総戸数は1.5~2倍に増える。これだけ増えれば、建て替えという事業は収益を生むので、進みやすくなる。

 先日も、建て替えられたタワーマンションを購入していいかという相談を受けた。懸念点は「既存不適格」と説明されたからだ。既存不適格とは、現行の法律では、建て替えた場合に今の床面積よりも減ってしまうということだ。

 建て替え案件では通常の容積率をオーバーしているので、「既存不適格」になってしまう。しかし、建て替わった物件の次の建て替えは少なくとも50年後になるし、この場合「既存不適格」で資産価値が落ちることはないので、購入に太鼓判を押した次第だ。