自分の価値を知りたい人に
おすすめな「スキルシェア」の副業

 仕事の概念が大きく変わりつつある中、企業に求められるシニア人材になるには中高年のうちからモデルチェンジする必要があると、伊藤氏は指摘する。

「先にも挙げた“学び直し”ができる人は、40代以降に会社に残る場合も、転職する場合も歓迎されます。会社に残りたいと考えている管理職であれば、改めて専門的なマネジメントスキルを磨くことで、今後の環境変化にかかわらず成果を上げる力を身に付けることもひとつの手段です。また、転職を考えている管理職ならば、自分のこれまでの成果だけではなく、新しい環境で何ができるのかを具体的に先方に伝えなければなりません。汎用的なマネジメント力に加えて、プレゼン力や文章力、コミュニケーション力など発信力のスキルアップも重要となります」

 20代の転職とは異なり、中高年の転職は即戦力が求められる。自身の能力を言葉で売り込めなければ、転職市場を生き残るのは難しいという。しかし、読者の中には自分が持つスキルの価値がわからないという人もいるだろう。自らを知る方法として、伊藤氏がおすすめするのは「スキルシェア」の副業だ。

「本業のスキルを生かしながら、業務委託でさまざまな会社で働いてみると、自分のスキルの汎用性や価値がわかります。それだけでなく、他社で働いた経験や学びが個人の成長にもつながるのです。近年、副業を解禁する企業が増えていますが、その背景には、他社で得た知見を自社でも生かしてほしいという企業側の狙いもあります。副業禁止の会社であれば、社内で新たなチャレンジができる別部署で、新規プロジェクトの立ち上げや、事業計画策定に携わることも勉強になります」

 仮に社員の学び直しや新たな挑戦を認めず、ルーチンワークだけを求める会社に勤めているなら要注意だとか。

「本人のキャリア形成にとってマイナスになる可能性があるので、社員の成長や挑戦をサポートする企業への転職をおすすめします」

 自分の勤務先が定年まで残るほどの価値があるか否か、自社の取り組みを見極める必要もありそうだ。

「今のところ、ほとんどの企業は自社が求めるシニア人材の明確な像を描けていない状況です。なので、中高年のみなさんには“シニア人材のロールモデル”を目指してほしいです。とくに会社に残る人は、若手と適切なコミュニケーションを取りながら、ともに成長していくのが理想ですね」

 伊藤氏は、最後に「働き方の転換期はチャンスと捉えてほしい」とアドバイスを送る。時代の変化に翻弄されず、未来を見据えた冷静な判断が求められているのだ。

<識者プロフィール>
「70歳定年」に向けて、中高年が今やるべきこととは

株式会社Works Human Intelligence WHI総研 シニアマネージャー
伊藤裕之(いとう・ひろゆき)
2002年にワークスアプリケーションズ入社後、九州エリアのコンサルタントとして人事システム導入および保守を担当。その後、関西エリアのユーザー担当責任者として複数の大手企業でBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)を実施。現在は、17年にわたり大手企業の人事業務設計・運用に携わった経験と、約1200のユーザーから得られた事例・ノウハウを分析し、人事トピックに関する情報を発信している。