また、認知機能が弱い人の多くは先のことを想像するのが苦手で、「これをやったらこうなる」の1~2ステップ先くらいしか見通せない。すると、今自分がやっていることが何につながるのかがわからないため、やる気が起こらないのだ。たとえば漢字を覚えるにしても、「漢字を覚える→ほめられる→やる気が出る→テストでいい点がとれる→いい学校に行ける→いい仕事につける」という見通しが持てれば頑張れるが、認知機能が弱いと、「漢字を覚える→ほめられる」までしか見通しが持てないことがある。となると、ほめられなければ漢字を覚える気になれない。

 見通し力の弱さは犯罪にもつながりやすい。お金が欲しい気持ちが芽生えると、後先考えずに目の前の人から奪おうとしてしまう。警察に捕まるかもしれないなどと想像することができない。

 頑張れない理由としては、認知機能の弱さだけでなく、その人が置かれている環境の問題もある。マズローの欲求の5段階説によると、「頑張りたい」という自己実現欲求は最終段階の欲求だ。その前段の「生理的欲求」「安全の欲求」「社会的欲求」「承認の欲求」の4つの欲求が満たされて初めて、より高次の自己実現欲求が出てくる。だから、虐待に遭っているなどして4つの欲求が満たされていない子どもは、頑張ろうという欲求自体が起こらない場合がある。頑張れない人には、思いがけない背景があるのかもしれない。

◆誤った支援は逆効果になる
◇やる気を奪う声かけ

 頑張れない理由としては、先述したような本人に起因するもののほかにも、周囲の人々の何気ない言動がある。支援者に悪気はなくても、その言動によって、本人のやる気を削いでしまっているかもしれない。

 たとえば、話している子どもに対して「でもな……」「それは君にも…」などと、途中で割り込んで説教したり、自分の考えを押し付けてしまったりしていないだろうか。子どもは受け入れてもらいたくて話しているのに、そのようなことをされると、否定されたと感じ、心を閉ざしてやる気をなくしてしまう。子どもの話をとことん聞くなら、口を挟まないほうがいいのは当然のことながら、話が終わっても一切コメントをしないほうがいいくらいだ。

 子どもは愛情のない励ましを敏感に感じ取る。自分を省みても、嫌いな人からの励ましでやる気が出るだろうか? だから支援者としては、まず子どもたちに好かれる必要がある。といっても、甘やかしたり機嫌を取ったりするのではなく、笑顔で挨拶をする、名前を覚える、最後まで話を聞く、子どものやったことをちゃんと覚えているといった基本的な人間関係を築くことが大切だ。