今も昔も変わらない家庭崩壊
生活保護を使えない女性たち
最初に、新聞の人生相談欄に神奈川県在住の38歳の女性が寄せた相談を紹介する。
「結婚12年目で、4人の子どもがいます。夫は高収入のようですが、生活費は多くても月あたり10万円しか渡してくれません。いつもどこかに愛人がいて、現在の愛人は“推し”の元アイドル(22歳)です。昨年からは家にほとんど帰ってこなくなり、生活費も途絶えがちです。携帯番号を変えたようで、こちらからは連絡が取れません。
結婚以来、夫からの暴力が続き、私は心身がボロボロです。昨年からは病気で起きられない日が増えています。夫には、子どもたちだけでも養育してほしいのですが、それはイヤなようです。血縁者からも友人からも、夫のことで見放されています。役所は『結婚していて、夫に収入がある以上は』という理由で、公的な制度を使わせてくれません」
肉体的DV、精神的DV、経済的DV、さらに子どもの養育放棄が重なっている、極めてありふれた事例だ。この質問に対する回答者の女性は、「まずは母子で生活保護を」と勧めている。理由は、「福祉事務所は急迫状況にある母と子どもを放置しておけないはずだから」ということだ。さらに、家裁で夫に子どもたちの扶養を請求するといった法的手続きも勧めている。至極まっとうなアドバイスだが、なぜか「さっさと離婚しなさい」とは書かれていない。
実はこの人生相談は、約70年前の1951年8月2日に読売新聞夕刊に掲載された内容を、筆者がアレンジしたものだ。相談者は、新聞を読み投書することのできる、高いリテラシーを持つ女性であった。当然、1946年に旧生活保護法、1950年に新生活保護法が施行されていることを知っていたはずだ。