一昨年の参院選広島選挙区を巡る選挙違反事件で、東京地裁は先月、公選法違反の罪に問われた元法相で前衆院議員の河井克行被告(58)に懲役3年の実刑判決を言い渡し、地元議員ら100人全員の現金授受を認定した(河井被告は東京高裁に控訴)。しかし、東京地検特捜部は6日、100人全員を被買収で立件することなく、不起訴処分に。これに異議を唱える地元の市民団体は参院選当時に現職だった政治家40人を対象に15日、検察審査会に審査を申し立てた。河井被告に対する実刑判決と特捜部の不起訴処分で終わったかのように思われたこの事件。実は、広島の政界にとっては混乱の序章にしかすぎないのかもしれない。(事件ジャーナリスト 戸田一法)
次席検事による不可解な
不起訴の説明
1審東京地裁判決によると、河井被告は2019年3月~8月、妻の案里氏(47)=公選法違反の罪で有罪判決が確定、参院議員を失職=を当選させる目的で地元の首長や議員、元国会議員秘書ら有力者計100人に投票と票の取りまとめを依頼するため計約2870万円を配った。
そもそもだが、公選法221条は買収および利害誘導罪について、こう規定している。1項では「当選を得(え)、若(も)しくは得しめ又(また)は得しめない目的をもつて選挙人又は選挙運動者に対し金銭、物品その他の財産上の利益若しくは公私の職務の供与、その供与の申込み若しくは約束し又は供応接待、その申込み若しくは約束をしたとき」は、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金となる。
つまり、現金を渡した河井被告だけではなく、受け取った議員らも罪に問われなければいけないのだ。