視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のチーフ・エディターである吉川清史が豊富な読書量と取材経験などからレビューします。
コロナ禍でも売り上げアップの
飲食店は何が「例外」だったのか
東京都に4度目の緊急事態宣言が発令され、飲食店には引き続きの時短営業と、酒類の提供停止が要請されている。長引くコロナ禍に苦しんできた飲食店は、さらなる辛抱が強いられている。
当然ながら、昨年コロナ禍が始まってから、多くの飲食店の売り上げはガタ落ちで、廃業を余儀なくされた店も決して少なくない。だが、その中に「例外」的に売り上げを伸ばしている店もある。
小阪裕司氏の近著『「顧客消滅」時代のマーケティング』(PHPビジネス新書)で紹介されている、名古屋にあるコース料理専門の完全予約制レストラン「ことわりをはかるみせ ばんどう」も「例外」の一つだ。第1回の緊急事態宣言が出された2020年4月に、「前年比150%」を達成したという。
売り上げ増加の理由は「テークアウト」だ。「なんだ」と思った人も多いだろう。テークアウトなら、たくさんの店が実施している。それでも、たいていの店はコロナ禍以前の売り上げには届かない。
「ばんどう」が売り出したテークアウトは、「3000円ののり弁当」と「8000円の高級弁当」という特徴あるものだったが、もともと高級店なので、単価の高さが効いたわけでもないだろう。小阪氏によれば、「ばんどう」は「顧客を持っていた」ことが大きい。フェイスブックなどでお店の“ファン”と密接につながっていたがゆえに、高級弁当というコンセプトが理解され、浸透し、爆発的に売れたのだという。