変革の中核は“文化を変えること”

 クラウド到来により余儀なくされた変革だが、結果は出始めている。先に発表した決算(会計年2021年度第2四半期)の売上高は前年同期比9%増の67億ドルとなった。グリーンレイクの年間ランレートは前年同期比30%の6億7800万ドル、受注件数は前年から41%増加した。ネリ氏は、「グリーンレイクの事業規模は今後3年で3倍になり、売り上げに占める比率は15%程度になる」と見込む。

 一方で、7万人規模の従業員を抱えての変革は容易ではないことも認める。変革の進め方についてネリ氏は、「最初にやるべきは、どこで戦うのか、どこで勝ちたいのかを定義すること」という。次に、「顧客に対して明確に価値提案をする。顧客に自社に必要な企業と思ってもらい、関係を維持する」と続ける。

 変革において最も難しいことを尋ねると、「文化を変えること」と即答する。変革を率いるリーダーとして、「自分が変化できると信じることができれば、他のメンバーに明確なビジョンを伝えることができる。組織がどこに向かっているのかを示すことができる」とネリ氏は語る。

 ビジョンを示し共感を得ることができれば、実行だ。実行に当たって、HPEの場合はスキルのアップグレード、営業のやり方を変えることなどが必要だった。「長い間、インフラの企業だった。現在、ソリューションにシフトしており、ここではソフトウエアとサービスが重要になる」とネリ氏は述べる。

 具体的に、ソフトウエアとサービスの会社になるとどのようなことが変わるのだろうか? 分かりやすい例が営業だ。営業担当が話をしにいく相手が、それまでは主にIT運用に携わる担当者(情シス)とやりとりしていたのが、CIOやCTO、データ責任者などの幹部レベル、そしてアプリケーションの開発者に変わってきた。訴求する内容も自然と変わってくる。

「どのようにHPEの価値を伝えるか、エンゲージするのか。まだ変革の道のりにある」(ネリ氏)

 さらに、「実行した結果を測定して説明すること」も同じぐらい重要だという。その一つとして、従業員のエンゲージを定期的に測定している。CEOに就任して3年半、従業員エンゲージは過去最高の85%に達しているとネリ氏は胸を張る。6月に、「自社のビジョンと戦略を信じるか」と尋ねたところ、98%の社員が「イエス」を選んだ。

 それでもネリ氏は言う。「(変革と)言うのは簡単。だが、実行は簡単ではない。時間はかかる」