唐揚げ店の店舗数急増は
新規事業へのハードルの低さが要因か

 前述の通り、2021年4月時点で全国にある唐揚げ店の数は推定3000店舗を超えている。2012年は450店舗であったことから、この9年間で実に約7倍も店舗が増えているということである。その理由としてまず挙げられるのは、「新規参入のハードルが低いこと」だ。

 鶏肉は元々原価が非常に安いが、業務用のものを用いたり、中国やブラジルからの輸入品を使用したりすればさらにコストを抑えられる。また、唐揚げ店は冷蔵庫とフライヤー、排気口さえあれば開業できる。そのため、設備投資を含めた準備資金も安く、最低35万円から開業可能だともいわれている。さらに、テイクアウト専門店であればスペースの広さも不要であるため、より低コストでの事業参入が可能だ。

 その他にも、高度な調理技術が不要であることも新規参入しやすい理由の一つだ。唐揚げは調理が簡単で、特別な技術を習得することなく誰でも気軽に作ることができる。また、短時間で簡単に量産することが可能であるため、人件費も削減しやすい。

 先にも述べたが、しょうゆベースや塩ベース、だしベースなどの味付けのみならず、鶏肉はチキン南蛮、ヤンニョムチキン、油淋鶏など、ソースや調理方法によって、メニューのバリエーションを増やすことも容易だ。味の差別化を図るというのも、唐揚げ店を運営するにあたって大きなポイントである。

 さらに、現在では「鶏笑」や「中津からあげもり山」「からあげの匠」など、フランチャイズ加盟募集を行っている企業も多く、借り入れから売り上げ管理までサポート体制が整っているというのも、参入へのハードルが低くなっている要因の一つだと考えられる。

 このように、年々急成長を遂げている唐揚げ市場だが、一体このブームはいつまで続くのだろうか。一過性のバブルとして終わりを遂げるのか、それとも人気は定着するのか。ここからは唐揚げ市場の近年の傾向と、今後の可能性について検討していく。