将来のための教育で
金銭的、体力的負担は増大

 これまで中国は、勉強を最優先する風潮があることや、厳しい受験戦争と学歴社会で知られてきた。全国統一大学入試「高考」は、「運命を変え、人生を決める」試験であり、生徒たちはその日のために勉強ばかりの日々を強いられてきた。

 中国では、子どもを持つ親の間に「わが子にスタートラインで負けさせない」という共通の認識がある。そのため、子どもが生まれてから早々に幼児教育を始める親が多数。その後は小・中・高校の12年間、子どもたちは睡眠を削って深夜まで大量の宿題をこなし、休日や夜間の学習塾通いが続く。1歳の子どもに英語を習わせたり、幼児園児が小学校1・2年生レベルの算数ができたりすることが普通となっている。

 親はこうした英才教育に金を惜しまない。先述の通り、「将来がかかっているから」だ。教育費は年々膨張していく。それだけではない。多くの小学校では、SNSで保護者のグループを作り、親に宿題の情報を共有し、宿題の完成を促したり、チェックしてもらったりするようになっている。親への体力的、精神的負担は大変大きい。

 筆者の中国にいる数人の友人は、子どもを学習塾のほか、水泳、絵画、ピアノなどの教室にも通わせており、毎月1万元(約16万円)以上かかるという。中学生や高校生なら、その倍の支出となっていると話す。

 社会の風潮を背景に、親が一人の子どもの教育のために多額の費用と労力を割かなければならず、実際、「家計的にも体力的もついていけない」と嘆く親は多い。教育費の高騰は、少子化の大きな原因となる。

新方針は中国の教育を変えるか
受験制度に課題も

 学校の勉強では事足りず、塾に通わなければ受験で勝てない。学校で人気の教師は校外で学習指導を行い、給料をはるかに上回る収入を得る。塾は高給で優秀な教師を引き抜いたり、海外留学経験のある高学歴の人材を採用したりする。また、進学率を上げるため、有名校と癒着し利害関係となる。そして、経済の格差により農村部や経済的に恵まれない家庭の子どもは塾に行かせられないなど、教育の格差は深刻な状況にある。

 今回の「通知」は、こうした「社会現象」を問題視し、根底から変えようとしているものだ。