親はまず、「自分は就活について現状を知らないのだ」と肝に銘じてください。そのうえでアドバイスをしなければ、いくら子どもに声をかけても、「親は何もわかっていないから、相談しても無駄だ」と見切られてしまいます。

 就職活動の実態を知らない親としてありがちなのは、就職したい企業や業界を選ぶ際に、「あなたの好きなこと、やりたいことをやりなさい」と言ってしまうことです。親は自分も社会に出て、働いたり、家庭を持ったりして、「やりたいことをやる」ということの難しさをよく知っているはずなのに、なぜか子の就職については「子どものやりたいことをやらせよう」とするのです。

 それを鵜呑みにして、就職先では「やりたいことをやるべき」なのだと思ってしまった学生は、「やりたいことができる会社に入りたい」と言うわけですが、もちろんそんな会社はなかなかありません。それよりもご自身の経験から「やりたいこと」と「向いていること」は違うことを教えてあげるのが良いと思います。

父母は一番身近な「仕事の先輩」
真実を伝えられる唯一の存在

 では、親が子に対してできる有意義なアドバイスとは何でしょうか。それは、仕事の大変さを具体的に語るということです。

 実は、親は驚くほど、自分の仕事の大変さを抽象的なレベルでしか子に伝えていません。たとえば、(肉体的・精神的に)疲れる、いやな上司がいるという愚痴程度の話です。そうではなくて、大変さの中身を具体的に教えることが、親が唯一できることなのです。

 採用担当者やリクルーターは仕事の「きらきらした要素」だけをまとって、就活生の前に現れます。子はその「きらきら」だけに反応し、憧れて、企業選びや業界選びを失敗してしまうこともありますが、親こそ自分がしてきた仕事の中で、何がどう具体的に大変だったかを語れる、またそれを腹蔵なく教えてくれる、「一番身近なOB・OG」なのです。