たとえば、見積もりをつくることの大変さを伝えてもいいでしょう。値引き交渉をされる、他社と相見積もりを取られる、後でこれも追加しろと言われるなど、いくらでも話すことはあるはず。あるいは、プロジェクトの企画書を書くのが大変という話かもしれません。顧客対応ではどんなクレームが多く、どんなクレームが最も処理が大変かという話かもしれません。コンペでプレゼンする際、どのような工夫をしなければならないかという話かもしれません。
母親が専業主婦の場合でも、かつて勤めていた経験があれば、そのときの話をすればいいでしょう。こうした自分自身の経験を語ることが、子の就活に関して有意義に関われるポイントになるはずです。
子どもと真の信頼を築くには
話の「聞き方」にもヒントがある
ここで述べたのは、親から子に伝えられる内容についてのヒントですが、子の話を聞くときの「聞き方」にもヒントがあります。私はこれを「読解」の大切さと呼んでいます。
子が親に何でも相談するような、いわゆる「仲良し親子」の場合に成立しやすい方法ですが、子が企業説明会に行ったり、企業説明会の動画を視聴したりしたら、子にその内容を説明してもらうのです。親は子がその企業で仕事をするときに「誰が登場人物なのか」を尋ねましょう。つまり、顧客、取引先、部署の担当者など、その仕事では誰とやりとりすることになるのかを聞いてあげるのです。
もちろん、そうすることで子はその説明会の内容を整理できますし、それは自動的に自分でわかっていないことを洗い出す作業にもなります(「企業説明会の聞き方」の記事参照)。
ここで重要なのは、子が聞いてきた企業説明会の内容や、その企業について、親が100%理解することではありません。間違っても、「やっぱり自分には今の企業のことはわからないから、もういいや」などと思ってはいけません。仮に親が理解できなかったとしても、子どもが聞いてきた内容をきちんと説明できていれば、子どもは企業のことを理解できているということがわかります。そのことを確認できたということで、十分コミュニケーションは成り立っているのです。そして、これが親子の信頼関係の築き方なのです。
親は「就」職活動の実態を知らない。その前提に立つのがまず第一歩。そして、自分の経験に基づいて仕事の具体的な大変さを話したり、子の企業説明会の成果を「読解」したりすることを通じて、子の就活に関わっていくように努めてみてください。
(ダイヤモンド・ヒューマンリソース HD首都圏営業局 局長 福重敦士、構成/ライター 奥田由意)