小川 なるほど。いたずらは「バレないように」という不自由さがあるからピッタリですね。手伝ってもらわずに自分でなんとかしなくちゃいけない(笑)。

ジョブズの先生がしたこと

加藤 それから『オタク偉人伝』には、小学校でもいたずらばかりしているジョブズの「みんなと同じは死ぬほど退屈」という特性を、4年生のときの担任、テディ先生が理解してくれたという話がありましたが、これは本当によかったですね。ジョブズにとって幸運だったと思います。

小川 テディ先生はジョブズの才能に気づいて、「ラジオ作りキット」などのご褒美を用意してあげていました。これにハマって、勉強も楽しくなってどんどんできるようになっていくんです。4年生の終わりに受けた知能テストでは高校2年生レベルだったそうです。

 ジョブズ自身、テディ先生に出会わなければ刑務所行きになっていただろうと言っています。

子どもを「型」にはめない

加藤 最近、日本でも「ギフテッド教育」が言われるようになってきましたが、テディ先生がやっていたのはまさにギフテッド教育だったのだろうと思いました。

 ギフテッド教育とは、傑出したレベルの素質や能力を示す子どもに特別なサポートをする教育です。IQに限らず、特定の領域で秀でた能力がある場合、平均的なカリキュラムではじゅうぶんに能力を発揮できず、生きづらさの原因になることがあるんですよね。

 ジョブズも、IQが高かったり、エレクトロニクスに関する能力が高かったりしたわけですが、だからこそ平均的カリキュラムでは問題児になってしまっていたところもあるのかもしれません。

小川 テディ先生はジョブズを明らかに特別扱いしていたようです。そのおかげでジョブズは犯罪者ではなく、世界を変える実業家となりました。日本でも「ギフテッド教育」がきっと必要なのだと思います。でも、日本のカルチャーだと、「特別扱い」ってなかなか難しそうにも感じてしまいます。

加藤 昔に比べて、いまは少しずつ「特別扱い」のようなこともできるようになってきているみたいですよ。特定の領域で高い能力のある子で、席に座って授業を聞くことが難しいという場合もあります。廊下に寝転がってしまうとか。最近では、「それが心地いいなら、その姿勢で授業を聞いていいよ」と言う先生もいらっしゃるみたいです。

 ジョブズのように尖った才能を持った子がつぶされない環境になっていくといいですよね。

小川 本当にそうですね。ジョブズの両親は養父母ですが、両親も「この子は特別な子だ」と思って、決して型にはめることをしなかったんです。

『子育てベスト100』の中に「型にはめない」という項目がありますよね。「子どもの選択が親の期待通りではなく、想定の範囲からはみでてしまうと、親は否定したくなるものです。ですがそこで一歩ふみとどまり、『それは自分の考える枠からはみだしてほしくないというエゴではないか』と自分に問いかけてみます」

 と書かれていました。想定の範囲と違うと、親も不安になるものですが、型にはめようとしてもいいことはないのでしょう。

 ジョブズの両親は、そもそも自分たちと違う「特別な子だ」と考えて、尊重するという姿勢だったから、才能を伸ばしていけたのだろうなと思います。
>>対談次回「『コンビニ飯』を使っている親が知るべき3つのこと」に続く