コロナ禍で市場環境が激変した13業界について、それぞれ倒産危険度ランキングを作成した。特集『廃業急増!倒産危険度ランキング2021』(全23回)の#20では、不動産業界を取り上げる。13業界では最多となる58社が“危険水域”に入った。(ジャーナリスト 名古屋和希)
長引くコロナ禍、楽観消える
空室率の上昇がリスクに
不動産業は景気変動の影響を受けにくいとされる。特に大手は主に保有不動産から賃貸料収入を生む事業を展開しており、経済環境に左右されにくい。当初、業界内では「新型コロナウイルス感染拡大の影響は一時的」との見方も多かったが、長引くコロナ禍に過度な楽観が許されない状況になりつつある。
コロナ禍で最も打撃を受けたのが商業施設の賃貸事業や、観光需要が消失したホテル事業だ。加えて、オフィス賃貸の先行きにも不透明感が漂っている。コロナ禍を受けた在宅勤務の浸透で、企業がオフィスを縮小・解約する動きが背景にある。
オフィス仲介大手の三鬼商事によると、東京都心5区のオフィス平均空室率は2020年3月の1.5%を底に、21年6月には6.19%まで上昇した。これは7年ぶりの水準で、賃料を下げる目安とされる5%を大きく上回る。好立地の優良物件を押さえる大手の空室率はこれより低いものの、空室率の上昇がさらに続けば、賃料の大きな下落を招きかねない。
倒産危険度ランキングに目を移そう。1位は名古屋を拠点に新築マンションの分譲などを手掛けるエスポア。同社の21年2月期の純損益は5500万円の最終赤字(前年は1億0600万円の赤字)で、2期連続で赤字を計上した。
賃貸・管理事業で、コロナ禍によるテナントの退店などで減収となり、同事業の営業利益が19%減った。同社の21年2月期末の借入金総額は73億円。これは負債と純資産を合わせた総資本の8割超を占める。
販売用不動産を保有する不動産業は、有利子負債が大きくなりやすいという特殊要因から、倒産危険度を表す「Zスコア」が悪化しやすい傾向がある。それもあって、危険水域入りの社数は58社となり、業種別で最多となった。
他業種とは異なり、財閥系も含めた大手が相次いでランキングに名を連ねた。前回と比べてZスコアが悪化した大手も目立つ。