ああ北京五輪期間中の王府井の様子(2008年8月筆者撮影)

東京2020オリンピックは、新型コロナ蔓延による無観客開催となり、当初の想定から完全に外れてしまった。本来ならば、道路は観光バスが埋め尽くし、国内外からの観光客に沸いているはずだった。コロナ禍だから…という理由は当然あるが、「予想を外した夏の五輪」は東京大会だけではない。振り返れば2008年の北京オリンピックも表向きの派手な演出とは裏腹に、むしろ悪戦苦闘を強いられていた。(ジャーナリスト 姫田小夏)

東京でも北京でも“マスコットTシャツ着用者”は目撃できず

 筆者が今、少し残念に思うのは、東京2020大会マスコットの「ミライトワ」の存在がほとんど目に付かなかったということだ。かろうじて量販店の隅の方でTシャツなどのグッズが販売されていたが、着用している人はほとんど見かけない。1年遅れの開催となったことで、売り時を逸してしまったのだろうか。

 実は、オリンピック・マスコット入りのTシャツを着た市民が少ないという現象は、2008年夏のオリンピック開催地となった北京でも同じだった。もっとも、その理由は中国独特の社会事情にあった。当局が中国には商標権侵害がないということを国際社会に示すために、一時的にニセモノ排除に力を入れたのである。

 ニセモノは排除されても、北京五輪のマスコットとなった「福娃(フーワー)」の公式グッズは至る所で販売された。巨大な抱き人形は298元、記念コインは5万9500元(当時のレートは1元=約15円)――。北京の庶民がTシャツに手を出せなかったのは、公式グッズの価格が生活者の予算とあまりにもかけ離れていたためでもあった。

 観光地に行けばどこでもこの公式グッズが売られていたので、富裕層や外国人観光客は公式グッズを買った。北京市旅行局は、五輪期間中の外国人旅行客は40万~45万人、外貨収入をおよそ4億米ドルと見積もっていた。(奥運期北京迎40万海外游客 外匯收入超4億美元-搜狐2008奥運 〈sohu.com〉