世界で新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい始めてから1年以上が経過した。しかし感染力の強い変異株の広がりにより、いまだ終息のめどは見えない。ハーバード大学ケネディ行政大学院のリカルド・アウスマン教授は、各国が行うロックダウン(都市封鎖)も「国によって有効性にかなりの違いがある」と指摘する。状況が変わる中、各国のリーダーはウイルスとどう戦うべきなのか。(聞き手/作家・コンサルタント 佐藤智恵)
国の間の移動制限がもたらす
間接的な「負の影響」
佐藤智恵 新型コロナウイルスの感染拡大は世界経済にどのような影響を与えていますか。直接的な影響と間接的な影響を教えてください。
リカルド・アウスマン 影響を総括するには早すぎると思います。現在はパンデミックの最中にあり、いつ終息するかもわからない状況です。半年前に同じ質問をされれば現在とは別の答えになったでしょうし、2年後に同じ質問をされても答えは変わってくるでしょう。
ここからは、あくまでも2021年7月までの状況を前提とした分析をお伝えします。
まず、直接的な影響についてです。新型コロナウイルスの感染拡大を抑制するための移動制限や対人距離の確保(ソーシャル・ディスタンス)は、各国の経済活動を阻害する直接的な要因となりました。これらの行動制限がもたらしたマイナス影響の度合いは、国や産業によって異なります。
国への影響についてですが、産業構成、ロックダウンの期間などによって影響度合いは変わってきます。当然のことながら行動制限が長引けば長引くほど、その国の経済は打撃を受けますし、観光業などが主要産業である国々はより大きなダメージを受けています。
産業への影響については、リモートワークが可能な産業へのマイナス影響はそれほどなく、むしろ恩恵を受けている企業もありますが、エンターテインメント、外食、旅行など対人接触型サービスを伴う産業は直接的な打撃を被っています。デルタ株の猛威によって、今後もロックダウン(都市封鎖)や厳しい移動制限が行われることが想定されていますから、この傾向はしばらく続くでしょう。
次に間接的な影響についてです。