英国はコロナ医療にすぐシフトできたが
日常的な医療体制は日本よりも過酷?

 英国では、昨年3月にロックダウンを実行したと同時に10日間程度で、国内の医療体制を新型コロナ用にシフトした。しかし、それはがんを除く不要な手術を延期し、退院可能な患者はすべて自宅療養に切り替えて実施したものだった(ピネガー由紀『日本人が知らない英国「コロナ病棟」のリアル 現地在住看護師が語る医療崩壊を防ぐ仕組み』)。

 つまり、英国では、日本の何十倍も新型コロナ感染症の患者を出しながら、医療崩壊を起こさなかったことは事実なのだが、重症化する患者や死亡者が多かったことについて、日常的な基礎疾患の管理ができていないからだと思われると、筆者の知人である臨床医は指摘していた。

 実際、私が英国に在住していた時に、ナショナルヘルスサービス(NHS:無料の国営医療サービスシステム)へ友人を連れていったことがある。その時は、3カ所病院をたらいまわしにされ、診察を受けられるまで、9時間かかった。

 また、NHSでは、普段は風邪や季節性インフルエンザでは病院での入院はおろか、診察すらしてもらえない。NHSの受付窓口で簡単に診断されて処方箋をもらい、薬局で薬を買って自宅で休むだけだ(第277回・p2)。

 つまり、英国の日常的な医療のレベルは日本と比べて高いとはいえない。それが、日本と欧米の新型コロナの重症化率、死亡率の差につながっているのではないか。ゆえに、日本の現状の医療体制を崩してコロナ対応に向けることには、慎重であるべきだと思う。

 それでは、野戦病院の設置は非現実的な案と切り捨てるべきか。私はそうは思わない。