視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のチーフ・エディターである吉川清史が豊富な読書量と取材経験などからレビューします。
オリンピック選手が
「頑張れる」のはなぜか
1年延期、無観客での開催となった東京オリンピックが閉幕し、パラリンピックを残すのみとなった。新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言下の大会だったが、真摯(しんし)に競技に向き合い続けた選手たちの「頑張り」に心を打たれた人も多かったはずだ。
アスリートたちは、なぜ「頑張る」ことができるのだろうか。国を代表している使命感や、見る人たちに勇気と希望を与えたいといったこともあるだろう。しかし、現代の彼らは「自分のため」に頑張るケースも多いのではなかろうか。達成感であったり、承認欲求であったりもするだろう。
そして、彼らが承認欲求を満たせるのは、社会全体が「頑張る」ことをことさらに評価する前提があるからだと思う。裏返せば、「頑張らない」「頑張れない」人は評価されない。日本人のメンタリティーとしては、ほとんど努力せずとも結果を出しているように見える天才肌のアスリートよりも、辛抱強く頑張り抜いてメダルにたどり着いた五輪選手の方に共感しがちなのではないか。
ところで、緊急事態宣言の下、飲食店の時短営業や酒類提供の自粛、不要不急の外出を控えるよう要請がある中、繁華街などでの「路上飲み」が問題となっている。テレビのワイドショーでは、若者が数人、道端でマスクを外してビールなどを飲みながら談笑する様子が顔をぼかして映し出された。
多くの人が感染予防に協力し、頑張って自粛を続ける一方で、彼らはなぜ「頑張れない」のだろうか。