中国が、高いシェアと技術力を持つ中小製造業の振興に本腰を入れ始めている。中国の振興策が軌道に乗れば、日本のグローバルニッチトップ企業にとっては、競争環境が激化することになりそうだ。(ダイヤモンド編集部 杉本りうこ)
IT大手締め付けの裏で進む
中国の「小さな巨人」育成
Eコマースの阿里巴巴集団(アリババグループ)、オンラインゲームの騰訊控股(テンセント)、配車サービスの滴滴出行(ディディ)――。自国のIT企業に対して、中国共産党政府が厳しい締め付けを続けている。
締め付けを受けて、今夏の中国株式市場は大荒れ。それにつれて世界の市場にも余波が広がり、一時は中国発、世界同時株安への警戒感が広がった。自国を代表する企業に鉄ついを下し、株式市場の混乱までもたらすような政策は、政府による自殺行為のように見えた向きもあるだろう。だがこういった動きの陰で、中国政府が猛烈な振興に乗り出している産業もある。製造業である。
7月上旬、工業・情報化部や国務院国有資産監督管理委員会などの中国の中央政府6部門は連名で、優れた製造業企業の育成を目指す指導意見を発表した。指導意見とは法制化などに至らない、比較的ソフトなコントロール力を持つ政策文書だ。
この文書の中で中国政府は2025年までに、大企業ではないが高い技術力やイノベーション力を持つ「小さな巨人企業」を1万社、ニッチ市場において断トツのシェアを誇る「ニッチトップ企業」を1000社育成することなどを目指すとしている。製造業の中でも、大規模な企業ではなく、むしろ中小企業をターゲットにした内容である。