ビジネスだから将来に不確実性がある。投資家がこの株式のリスクを勘案して、年間にこれだけ欲しいという期待リターンを6%とすると、期待される利益成長がゼロの場合、6%を割引率として計算される時価総額は1667億円(1億円未満を四捨五入)だ(100億円÷0.06=1666.66…億円)。

 ここで、仮に将来の長期にわたる利益成長率が年率プラス2%だと予想されるとすると、時価総額は2500億円となる(100億円÷{0.06−0.02}=2500億円)。

 逆に、長期的利益成立が年率マイナス2%だとすると、時価総額は1250億円となる(100億円÷{0.06+0.02}=1250億円。計算は高校の数学の教科書にある「等比数列の和」の公式を当てはめるとできる)。

 マイナス成長であっても株価は付くし、それぞれの理論通りの株価で投資するなら、プラス成長の場合と投資した場合の期待リターンは変わらない(これらの場合、いずれも6%だ)。

 さて、買収を検討しているビジネスは、将来の人口に比例して利益の大きさが決まると予想され、定期的に消費される消費財のようなものと想定する。また、被買収企業は絶対的な競争力を持つノウハウとブランド価値を持っていると想像してみよう。

 人口が年率2%増えると予想すれば2500億円投資するかもしれない。しかし人口が2%減少すると予想するなら、この事業に1250億円投資して、残りの1250億円は別の目的に使うだろう。豪華な生活をしてもいいし、豪快に寄付をしてもいいし、現代美術を買い漁ったりするのも楽しいだろう。無理に「資本」に投資しなくていい。

人口減少=マイナス成長時代の
「資本家」の行動とは?

 先ほど読者が持っていると想像してもらった2500億円は、現実に生じるとするなら、おそらくは何らかの事業の成功によって得られたものだろう。読者は、成功した2500億円の資本を持つ「資本家」なのだと思うことにしよう。

 さて、その外から「資本」に見える資産は、来期以降に必ずしもリスクを取って利益獲得を目指す資本として再投資される必要はない。良い投資機会があれば部分的に投資すればいいし、リスクに見合う価格で投資できないなら、投資などせずに気持ちよく消費すればいい。もともとお金は、使うために稼ぐのが普通だ。