大御所という存在になると、周囲が気軽に話しかけづらい空気が出てくる。しかし、内村氏にそういった雰囲気は全くない。そのため、後輩やスタッフは緊張することなく、内村氏に気軽に話しかけることができる。これは内村氏が生み出す声をかけやすい「空気感」によるものである。

 リーダーはその存在感と振る舞いで周囲に緊張感という圧力を与えてしまう。そうなるとメンバーはリーダーに話しかけづらくなってしまい、発想と共有の可能性を下げる。

 あなたがリーダーという時点で、相手はあなたに何らかの緊張を覚えてしまうのである。そのため、リーダーはメンバーを緊張させないための空気づくりで、緊張を取り除いていくことが重要なのである。

◇メンバーを自由に放牧させる勇気を持つ

 内村氏が仕切る現場では、若手芸人が大御所の存在に臆することなく、自由にしゃべったり、ボケたりすることができる。内村氏の現場は「自由」なのである。言い換えると、この内村氏のチームマネジメント方法はまさに「放牧型」なのである。

 この「緊張させない」「自由に放牧する」という方法で、内村氏はメンバーの潜在的な能力を引き出している。

「自由に放牧する」という手法はチームとして「成果を生み出せないリスク」を同時に抱えている。通常であれば、リーダーはチームが目標を達成するために、メンバーを逐一管理・統率する。このリーダーの統制によって、目標を達成できるのである。

 しかし、内村氏はメンバーを自由に放牧させる手法でも着実に成果を上げている。その秘訣が「放牧によって各自の自主性を育てる」というチームマネジメントである。

 メンバーは自分で失敗の経験を重ねないと成長しない。メンバーが致命的なミスをしないようにリーダーが管理して手を打つことは、短期的にみれば成果は上げやすいが、長期的にみれば成果は上げにくい。なぜならば、リーダーが管理することで、メンバーが自身の頭で考えて行動する機会を奪っているのである。そして、そのような管理を続けている限り、メンバーを管理し続ける構造ができあがってしまう。

「チームを育てたい」リーダーにとって、必要なものは「放牧する勇気」なのである。放牧された環境でメンバーが経験を積み重ねることで、強いチームを築きあげていくことができるのだ。