◇目標の「旗」を立てる位置

 各メンバーがバラバラに行動してしまい目標を達成できない。これが自由に放牧する上での課題である。この課題を乗り越える秘訣は「この範囲を活動領域とする」正しい範囲を示す「旗」を正確に立てることにある。また、最初の旗を可能な限り絞り込み「本当に重要なことだけを提示する」ことが大切である。

 内村氏が優れている点は、この目標の旗を各メンバーが頑張らないと手が届かない、少し先に立てることにある。この「少し先に」というのがポイントである。少し先に「旗」を立てることで、チームとして共通の目標を目指すことができる。そうすることで、リーダーが逐次指示を出さなくとも、旗を目標として、各自がやるべきことを実行できるのである。

 この旗が遠くにありすぎると、メンバーは「無理だ」という思いが先行してしまい、努力の強制と感じてしまう。人間は強制的な努力ではなく、自発的な努力だからこそ、潜在的な力を発揮できるのである。つまり、リーダーは目指すべき目標の「旗」を立てる位置を見極める力を求められる。

◇メンバーの失敗も「結果ごと背負う」覚悟

 正確な位置に旗を立てたとしても、自由な放牧が失敗に終わってしまう可能性がある。しかし内村氏の現場では、放牧型の手法でも、各番組がしっかりと成り立っている。それが可能なのは、現場でどんなことがあっても、最終的にはリーダーである内村氏が自分で引き取り、笑いへと変えてくれるからである。内村氏の現場にはその「安心感」が後輩たちのパフォーマンスを引き出しているのだ。

 メンバーを自由に放牧するリーダーシップは「最後はリーダーが背負う」という姿勢があってこそ成り立つのである。部下に新商品のマーケティング戦略を任せた場合、部下のアウトプットを最終的に、成果を出せる戦略としてリーダーが「昇華させる」必要がある。

 大切なことはリーダーが「初めから」ではなく「最後に背負う」ことである。また、リーダーは絶対に「成功」を担保する必要はない。必要なのは「責任を背負う」という「姿勢」や「覚悟」なのである。たとえ失敗したとしても「その結果ごと背負う」ことが求められる。

 もしリーダーであるあなたが、最後は背負ってくれるとメンバーが確信できれば、部下たちは安心して高いパフォーマンスを発揮できるはずだ。