ISIS-Kはアフガニスタンで最も過激な武装集団と恐れられているイスラム聖戦主義者たちで、「タリバンは穏健すぎる」として対立している勢力だ。8月30日にはカブール国際空港に向けて5発のロケット弾が発射され、ISISが犯行声明を出している。

 その状況を見ていると、米駐留軍というたがが外れた今、タリバンの復権によって他のイスラム過激派組織が刺激され国内外でイスラム組織のテロ活動が活発化しそうな気配だ。

多くの帝国が
武力制圧に失敗

「よく聞け。我々は許さないし、忘れることもない。お前たちを必ず見つけだして代償を支払わせてやる」

 自爆テロ事件直後に行った演説で、バイデン米大統領は犯人に向かってそう怒りをあらわにした。その姿はまるで西部劇で復讐を誓うガンマンのようだったが、すでに命運が尽きていた。

 米軍はアフガン東部のナンガルハル州にあるISIS-Kの拠点を無人機で報復爆撃したが、6人の子どもを含む9人の民間人が巻き添えで犠牲となったことが判明し、地元の反米感情を刺激する結果となってしまっている。

 米ブラウン大学のThe Cost of War Project(戦争の代償プロジェクト)の調査によれば、2019年だけでも女性や子どもを含む546人の民間人が、アメリカと連合軍の空爆で殺害されたという。

 そもそもアフガニスタンは自由主義や共産主義などのイデオロギーの御旗を振りかざして武力で押さえ込もうという単純発想で制圧できる国ではない。そのためアフガニスタンは「帝国の墓場」とさえ呼ばれているのだ。

 かつて古代ギリシャ、モンゴル帝国、ムガール帝国、大英帝国、そして屈強なソ連軍がこの地域に侵攻したが野望を果たせず撤退の憂き目に遭ったことからその名がついた。

 世界最強の軍事力を誇るアメリカも、20年の歳月と2500人近くの米兵の命を費やした揚げ句に同じ轍を踏んだことになる。