自分の判断を押し通すか、メンバーの判断に乗るか……。トップダウンとボトムアップの境界の見極めに迷うリーダーは少なくない。千差万別の状況に合わせてその都度判断しようとしても難しい。その場で的確に見極めて、簡単に発揮できるようになるスキルがある。(モチベーションファクター代表取締役 山口 博)
有名企業の経営層も悩む
「トップダウンかボトムアップか」問題
筆者は国内外自動車メーカーで役員研修を実施しているが、その際、「自分の判断に従わせるか、メンバーの判断に乗るか」「自分で手を下すか、メンバーに任せるか」「口を出すか、出さないか」に迷うという声をよく聞く。
トップダウンかボトムアップか、受任か委任か、発言か沈黙か――境界線をどこに引くかという問題だ。トップダウンの度が過ぎると「あの役員は自分たちを信頼してくれていない」という声が上がり、逆にボトムアップの度が過ぎると「判断力がない」と言われる。
自分で手を下してばかりいる役員は「任せてくれない」と不満を持たれ、逆に任せっぱなしだと「自分で何もやらない人だ」という烙印(らくいん)を押されてしまう。口を出しすぎると「細かい人だ」と言われ、逆に口を出さないと「現場を見ていない」と非難される……。
これらのことに迷っているということは、リーダーシップの繰り出し方を腐心しているということだ。逆に、こうした境界線に悩んだことがなかったら、トップダウン一辺倒、あるいはボトムアップ一辺倒のイニシアチブばかりを発揮している可能性がある。
トップダウン型のリーダーシップばかりを繰り出してもメンバーを巻き込めないし、ボトムアップばかりでも組織をけん引できない。状況や相手に応じてトップダウンとボトムアップを瞬時に使い分けるスキルを高めることが必要だ。
このように申し上げると、「使い分けをするには、状況や相手が千差万別なので、その都度判断するしかない」「これができるかどうかは経験がものをいう」「持って生まれたセンスによるので、後天的にはなかなか身に付かない」という声も上がる。
しかし、私はそうは思わない。状況に合わせてトップダウンかボトムアップかを、相手に合わせて受任か委任かを、対話に合わせて発言か沈黙かを、その場で的確に見極めて繰り出すことができるようになるスキルがある。それも誰でも短時間で、簡単に発揮できるようになるスキルだ。