「まだらリモートワーク」は、
チーム内に分断を生み出す

 ところが、リモート環境下では、こうした「ちょっとした雑談」がもたらしてくれる大きな恩恵が失われてしまいます。それがマネジメントにもたらすダメージはかなり大きいので、リモート環境下において、いかにこのダメージを小さくするかをよく考えたほうがいいと、私は思っています。

 第一に考えられるのは、リアルワークとリモートワークの併用です。

 仕事そのものはリモートワークだけでも回せる業種・職種であったとしても、それだけに振り切ってしまうと、メンバーとの信頼関係の基盤をつくる「ステージゼロ」がほぼ完全に失われてしまいます。だから、あえて出社する機会を設けて、人為的に「ステージゼロ」の場を設定するわけです。これは、最もシンプルな解決策だと言えます。

 ただし、「まだらテレワーク」状態になることには注意をしたほうがよさそうです。

「まだらテレワーク」とは、パーソル総合研究所執行役員の髙橋豊氏が『テレワーク時代のマネジメントの教科書』(ダイヤモンド社)で用いた言葉で、「出社組とテレワーク組が混在している状況」を指します。

 そして、髙橋氏は、同研究所の調査結果を踏まえて「『まだらテレワーク』は『全員テレワーク』の場合よりも、孤独感や不安が増大しやすく、マネジメントが難しくなる可能性があります」と指摘。その理由について、「出社組の間でスピーディに物事が決められたり、同じ会議に出席していてもリアルで出席しているメンバーのみが盛り上がったり……と、テレワーカーが置いてきぼりになってしまう事態が頻発する」からだと推測しています。

 これは、非常に説得力のある推測だと思います。

 そして、管理職は、チーム内でこのような分断を生み出さないような工夫をする必要があると思います。

 例えば、出社するか、自宅勤務するかを、完全にメンバーの自由に任せるのではなく、週に1~2回は、全員が出社する時間帯を決めるといいでしょう。「定例会議の日は全員出社」というルールを設けてもいいかもしれません。普段は「まだらテレワーク」を認めたとしても、定期的に全員がリアルに顔を合わせる機会を設けることで、分断を緩和することは可能だと考えられます。

オンライン上で「雑談ができる状態」をつくる

 もう一つ、妙案があります。

 これは、ある企業の現役管理職が実際に行っている取り組みです。そのチームでは、リモートワークを基本としていますが、週に1~2回、2~3時間にわたって、メンバー全員がWeb会議ツールに繋いだ状態で、それぞれの仕事を進めるのです。疑似的な形ではありますが、全員が顔を見合わせながら仕事をする時間を設けるということです。

 もちろん、管理職がメンバーを監視するようなことをするのではなく、むしろ、ちょっとした雑談を挟みながら、リラックスした状態で働けるように配慮します。こうした場で、管理職が一人ひとりに冗談混じりで声がけをしたり、メンバー同士が情報交換をしたり、雑談で盛り上がったりするわけです。管理職と一対一でホウレンソウがしたい人がいれば、二人でクローズド・ルームに入って話し合うこともできます。

 また、この時間帯に全員で「オンライン・ランチ」を一緒にとることも有効です。例えば、午前10時から12時までは仕事をして、12時から13時まではランチをとるわけです。

「オンライン飲み会」でメンバー間の交流を図ることもできますが、子育て中のメンバーやお酒が好きではないメンバーにとっては、それが負担になることもあります。しかも、「オンライン飲み会」の場合には、「もうすぐ終電だから、これで失礼します」と、途中で抜けることも難しいという難点もあります。

 一方、「オンライン・ランチ」には、そのような問題が少ないため、リモート環境下でもチームワークを維持するのに適しています。ぜひ、みなさんのチームでも試していただきたいと思います。

 もっと簡単な方法もあります。

 例えば、定例会議が始まる30分前には、管理職がWeb会議アプリを立ち上げていることをアナウンスして、自由参加による「雑談タイム」を設けるのもいいでしょう。あるいは、定例会議の開始5分前には必ず全員がWeb会議アプリに繋げるルールにして、その5分間で会議に向けてウォーミングアップのために「雑談」する手もあります。

 ともあれ、リモート環境下では、メンバーとの信頼関係を築き、チームワークを育てるために不可欠な「ステージゼロ」の場を意図的に作り出す必要があります。一見、仕事の生産性とは無関係に見える、このような取り組みこそが、長期的にはマネジメントの成否を大きく左右することになるのです(詳しくは『課長2.0』をご参照ください)。