スポーツの世界では
「根性」といった想いと同様、
データからの判断も重要です

鈴木氏:「ものさし」ではないですけど、何か一つ数値化して可視化することで、基準が見つけやすいと思うんです。体調に問題がないときでも、尿の検査をして、尿の水分量を測ることも大切なんです。そのときに数値として自分の体調が可視化できます。そこで、選手たちの行動変容を図ることができますので…。

 時代は変わって、スポーツ界でも「水を飲め」と頻繁に言われるようになりましたが、実際にどれくらい飲めばいいのか? 今飲んでいる量が足りているのか? それとも足りていないのか? 具体的に分かりませんよね? それを練習の直前に尿の水分比重を測って、足りているか足りていないかを確認することができれば、最初は足りていないと言われている選手も、どのくらい飲んだら足りるようになるのか加減が見当できるはずです。

 そうして水分量を計ってから適切に水分を補給することで、具体的にパフォーマンスの向上を実感すれば、データをもとにしたパフォーマンスアップ、およびコンディションのコントロールの正当さに気づきます。私自身がそうだったので。これがものさしとなって、計画的にパフォーマンスを発揮できるようになるんだと思います。

2007年12月13日、横浜国際スタジアムで行われたFIFAクラブワールドカップ準決勝のカードは浦和レッドダイヤモンズ VS ACミラン。そこでアンドレア・ピルロ選手にプレッシャーをかける鈴木啓太選手2007年12月13日、横浜国際スタジアムで行われたFIFAクラブワールドカップ準決勝のカードは浦和レッドダイヤモンズ VS ACミラン。そこでアンドレア・ピルロ選手にプレッシャーをかける鈴木啓太選手 ETSUO HARA / GETTY IMAGES

 例えばJリーグの選手たちなら、Jリーグクラスの範囲で役立つ「ものさし」を持っています。ですが、これがヨーロッパでプレーしている選手たちになると、その「ものさし」の活用範囲はヨーロッパ基準になるわけです。浦和レッズ時代の私で言うなら、FIFAクラブワールドカップジャパン2007にアジア代表として出場し、ACミランと試合したときに、そのスケールの違いを痛感したわけです。この差を早く縮めないといけない…と、大いに学びました。

 このようにサッカーをしてきて学んだことは、「『ものさし』を活用して、計画的に前進を図ること。このことを真摯に継続していけば、必ずや希望の結果に到達できる」ということになります。そこには、母から譲り受けた栄養学、コンディションニングの大切さが含まれています。