国内リードユーザーの「価値の大喜利」を
海外へ輸出しマネタイズする

尾原 実は、書籍『プロセスエコノミー』からそぎ落としたんですけど、実は「マイクロエコノミー」の中でいろんな人が「試すことそのもの」に、「Google」を倒す規模の価値が眠っていると思っています。「プロセスエコノミー」は、「参加型」から「参画型」になり、「参画者」が多様になるんですね。

高宮 今の話はすごく面白くて、前回紹介した「アル」がやっている「elu」上で、面白いことが生まれてきています。

 クラウドファンディングは、「これに参加して応援する」という「応援する金額」を払うわけですよね。eluではさらに一歩先に行っていて、「これを応援できる権利」を売るということも生まれてきています。

 これは、株式を直接買うのではなくて、株式を買う権利、すなわちオプションのような話なんです。なんと、オプションプライスを払った上で、「応援する金額」を払うという「二段構え」なんですね。

尾原 階層が生まれ始めているんですね。

高宮 これは思い付きませんでした。「金融商品と同じオプション価値が、金融商品以外の普通の財で生まれてきてるってすげえな!」と思いました。

尾原 結局、いろんな人が「参画」してくれるので「新しい価値」が生まれるんですね。最近、「けんすう」こと古川健介さんと、この現象について話しているんですが、これを「価値の大喜利」と言っているんですね。

「こう来たら、こう来るよね」「ああ来たら、ああ来るよね」と、みんなで大喜利をしていると、気付いたら今の発想だと思い付かないようなところまで、たどり着いていることがあります。これが「Googleのような巨大プラットフォームに変わる価値になるかもしれない」と思っています。

高宮 その辺りって、日本の強みだと思っています。先ほどの「mixiコミュニティ」上でモノの売買を始めた話は、まさに言い換えると「ユーザー同士で大喜利をして、新しい価値を見つけた」ということだと思います。ユーザーが「最適化されていないサービス」を使いこなして、「新しい価値」を生み出しています。それは、ユーザー側が「工夫」してくれている話だと思っています。

 その話が、今の大喜利と一緒で、経営戦略用語でいうところの「リードユーザー(先駆的に創意工夫をしているユーザー)」みたいなことだと思っています。日本は、「洗練されたリードユーザー」が多いから、大喜利のPDCAのサイクルが回るし、早い。

尾原 めちゃくちゃ早く回る。

高宮 そこから新しい価値が生まれてくる可能性が高くて、ここは「日本にチャンスがある」ところだと感じています。

 先ほど尾原さんがおっしゃっていたように、「新しい価値」が生まれてきたときに、それを一気に世界に出すことがやりやすくなっています。

尾原 そうですね。

高宮 「gree」がやっているバーチャルライブ配信「REALITY」の荒木英士さんは、「昔に比べてめちゃくちゃ楽ですよ」と言うわけです。

 普通は「VRはまだ高い」とか「市場がまだないのでは?」と思いますよね。荒木さんが言うには、「Day 1(1日目)からグローバルを対象にしてやると、各国から薄く広く、リードユーザーが集まるから、結果的にドメスティック(国内)でやっているよりも大きくて、いきなり立ち上げやすいですよ」というわけです。

尾原 「価値の大喜利」が起きやすい状況が出来上がってきているから、初めに「共犯者」になるような、エッジが立ったユーザーが世界中から集まってくる。そうなれば、その上で「勝手に価値の大喜利」が進んでいくから、そこにイノベーションのヒントがたくさん集まるということですね。

高宮 というよりも、「価値の大喜利」自体はリード市場でリードユーザーがたくさんいる日本でやります。けれども、日本ではマーケットが小さいからスケールさせるまで時間がかかります。そこで、「リードユーザーが開発した価値」を海外へ輸出するチャネルとして、テクノロジーがイネーブルしてくれたから昔よりめちゃくちゃ楽だ、ということだと思うんですよね。

尾原 そっか。なるほど。「初音ミク」が成功した理由ってまさにそれですよね。

 日本の「超絶リードユーザー」が「ニコニコ動画上」で価値の大喜利をして、結果的にそこがマネタイズしたのが、グローバルな配信プラットフォームである「YouTube」ですよね。

 だったら、両方のプラットフォームを自分で持てば、次の「YouTube」だったり、次の「Facebook」が、そこから立ち上がってくるかもしれないということですね。

高宮 大喜利された価値の種類として、ある国の中で、マスまで広がるのは難しいかもしれないけど、グローバルで少しずつ「アグリゲート(集約)」すれば十分ですよね。

尾原 これはすごいヒントになりますね。濃厚な時間でした。本当にありがとうございました。

高宮 あっという間でした。まだまだいけますね(笑)。こちらこそありがとうございました。