税務調査官が来ても
玄関のドアを開けてはいけない

 任意調査は、(1)税務署から申告を担当した税理士事務所へ連絡が入る→(2)相続人と日程の調整→(3)税務調査の立ち合いという流れで行われることになる。

 しかしごくまれに、税理士事務所への連絡をすっ飛ばして、相続人のところへ税務調査官が直接訪問してしまうケースがある。

「ピンポン」とチャイムが鳴ったと思ったら「税務署です。税務調査に来ました」と告げられる。すると、多くの人は焦って玄関のドアを開けてしまうのだ。ドアを開けたら最後、調査官はあなたの自宅に入ってきて、一応了解は取るものの調査を始めてしまう。

 だが、ここで覚えておいてほしいのは、「突然、税務調査官が訪ねてきても、玄関のドアを開けてはいけない」ということだ。

 任意調査である以上、玄関のドアを開けずに、一呼吸おいてこう伝えればよい。

「うちは税理士さんにお願いしていますので、税理士に連絡をしてください」

 すると税務調査官といえども強制調査ではないので帰るしかないのだ。国税庁のホームページでも、税務調査の事前通知に関して「調査開始日までに納税者の方が調査を受ける準備などをできるよう、調査までに相当の時間的余裕を置いて行うこととしています」と記載されている。

 だが、相続財産に現金が多い場合に、現金を移動されるのを嫌って突然訪問してくる調査官がまれにいるのだ。しかし、そうした行為には応じなくてよい。

「しつこい税務調査」に根負けして
修正申告に応じる人も

 相続税の申告は、被相続人の死亡によって相続開始となってから10カ月後までに行わなければならないと定められている。そして、相続税の税務調査は申告後1~2年のうちに税務署から連絡が来るパターンが多い。

 税務調査などによってすでに申告した納税額に誤りが判明した場合、申告の誤りを税務当局が正して変更する「更正」か、あるいは申告の誤りを納税者が自主的に訂正する「修正申告」の2通りの対応がある。

 更正は税務署の判断による処分なので、課税する根拠が明らかでなければならない。ただ相続税の場合は被相続人が亡くなっているため、現金の行き先が不明なケースなども多くある。本来なら、その現金がどこかに存在するか、あるいは相続人に流れていることが証明できなければ、税務署として更正の処分はできない。

 すると税務署はどういう手段に出るか。

 相続人などへのヒアリングが何度も行われ、調査が長期戦となるのだ。