コロナ禍が長引いているが、コロナ以外の病気やケガで入院や手術などを余儀なくされることも時にはある。そんなときに必ず手に入れておきたいのが「限度額適用認定証」だ。連載『医療費の裏ワザと落とし穴』の第229回では、大きなケガ・病気・手術のときには必ずお世話になる「高額療養費制度」について解説する。(フリーライター 早川幸子)
300万円かかる医療費が
高額療養費制度で約11万円になる
東京都の「テレワーク実施率調査結果」によると、都内にある従業員30人以上の企業のテレワークの実施率は、8月に65%まで増加。週3日以上、実施している企業も51.6%となった。
ウイルスは、人と人が接触することによって流行する。企業のリモートワークの推進は、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するためだが、医療費に関する申請についても、自治体や健康保険組合は郵送での手続きを推奨している。
特に、これから入院や手術をする人が利用したいのが、郵送による「限度額適用認定証」の申請だ。限度額適用認定証とは何か。大きな病気やケガをしてしまい、高額な治療費がかかりそうなときには必ず取得すべきものだ。以下に説明しよう。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、国の指定感染症となっているため、検査や診療、医薬品、医学的処置、入院費など治療にかかる一連の費用は全て公費で負担してくれる。そのため、COVID-19に罹患して、高額な医療費がかかったとしても、原則的に自己負担はない(高所得層は一部負担金を求められるケースもある)。
だが、入院や手術など高度な医療を必要とする病気やケガは、COVID-19だけではない。特に、近年、増加しているがんの治療費は、新しい抗がん剤や医療機器などの開発によって高額化している。このように医療費が高額になったときに、頼れるのが「高額療養費制度」だ。
病気やケガをして、日常的に医療機関を利用する場合、患者はかかった医療費の一部を窓口で負担する。
医療費の自己負担割合は、年齢や所得に応じて決まっており、現在は未就学児が2割、70歳未満が3割、70~74歳が2割、75歳以上が1割だ。ただし、70歳以上でも、現役並みの所得がある人は3割を負担する(2022年10月から、75歳以上で一定以上の所得がある人は2割になる)。
例えば、45歳で医療費が1万円だった場合は、自己負担割合は3割なので窓口で支払うのは3000円だ。これくらいなら、家計費から捻出できる金額だろう。だが、前述のように、がんなどになって手術や化学治療などを受けたり、入院が長期化したりすると、医療費も高額になる可能性がある。例えば、医療費が300万円だと、同じ3割負担でも90万円を支払わなければならず、家計の大きな負担となる可能性がある。
そもそも、1927(昭和2)年に健康保険制度が創設された背景には、重い医療費負担によって患者が貧困に陥ることを防ぐ目的があった。そして、時代が進み、医療費が高額化するなかで、1973年に新たに導入されたのが高額療養費だ。
●限度額適用認定証があれば、窓口での一時立て替えも不要
●認定証の発行手続きは郵送でOK