本書の要点

(1)人に何かを伝える時は、手間暇をかけて言葉を選ばなければならない。そのためには、普段から相手の様子を観察する、言葉の引き出しを豊富にするなどの「伝えるための準備」が必要だ。
(2)「言葉選び」とは、たくさんの言葉の中から最適なものを選び、一つに絞ることである。
(3)「5行日記」には「過去と今の自分の比較」や「アンガーマネジメント」の効果がある。伝えたいことを言い換える「言葉の変換練習」にもなる。
(4)ネガティブワードを前向きな言葉に言い換えると、人を笑顔にするパワーが生まれる。

要約本文

【必読ポイント!】
◆言葉を選ぶ
◇「伝えるための準備」をする

『伝える準備』書影『伝える準備』 藤井貴彦著 ディスカヴァー・トゥエンティワン刊 1650円(税込)

 夕方のニュース番組が終わると、後輩たちが著者のデスクの周りに集まってくる。著者は何かを聞かれた時のために、常に準備をしているという。

 その準備とは、普段から後輩たちの仕事を観察し、「聞いてきたらこんなことを言ってあげたい」リストを作ることである。そのために、本番中のわずかな合間に気がついたことを、手元のノートに書き留めておく。

 もし不意に、後輩が「あの仕事どうでしたか?」と聞いてきたら、その後輩の仕事ぶりに対する個別のアドバイスが求められる。もちろん、「よかったよ」という言葉だけでは足りないだろう。しかし、焦ってその場しのぎで言葉を追加しても、その言葉は「練られていない」ことが多い。もしそれが相手に伝わると、助言の効果自体が薄れてしまう。

 後輩たちは、自己の成長のために「自分自身」への助言を求めている。それゆえ普段の何倍も集中して話を聞き、自分を理解してくれた上でのアドバイスかどうかの「品定め」すらしているだろう。だからこそ相手を上回る準備をして、真剣勝負で臨まなければならない。

 アドバイスの準備ができていない時は、「今度しっかり見直しておくから、時間をくれないか」と伝える。しかし結局は、より多くの時間をかけて助言することになるため、普段から準備をしておいた方が得策なのである。