「Airbnb(エアビーアンドビー)」や「Uber(ウーバー)」といったシェアリング・エコノミーの存在感がますます増していて、旅行業界にも大変革を促しつつある。既存のホテル・旅館業やタクシー業などは、これらの導入に反発しているが、星野リゾート代表の星野佳路さんは一貫してその導入の必要性を声高に訴えてきた。既存業界が割を食うのではないか、どのようなメリットがあるのか、シェアリング・エコノミー導入を積極推進すべきだと訴える星野さんに聞いた。

シェアリング・エコノミーに後ろ向きな日本

 現在、海外の観光地では、多くのシェアリング・エコノミーが当たり前のように利用されています。宿泊業の分野では、空き家を貸したいホストと部屋を借りたいゲストをウェブでつなぐ民泊がそれに当たります。世界的に有名な事業者としては「Airbnb(エアビーアンドビー)」が大きく成長していますが、世界の観光地では地域ごとに民泊を担う事業者も多く、私も海外の雪山でスキーを楽しむときには、現地の民泊サービスをよく使っています。

星野リゾート代表が訴える「一流観光地の条件として“民泊”が不可欠な理由」星野佳路(ほしの・よしはる)さん
星野リゾート代表
1960年長野県軽井沢生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、米国コーネル大学ホテル経営大学院修士課程を修了。帰国後、91年に先代の跡を継いで星野温泉旅館(現星野リゾート)代表に就任。以後、経営破綻したリゾートホテルや温泉旅館の再生に取り組みつつ、「星のや」「界」「リゾナーレ」「OMO(おも)」「BEB(ベブ)」などの施設を運営する“リゾートの革命児”。2003年には国土交通省の観光カリスマに選出された。

 シェアリング・エコノミーは、個人の持っている遊休資産と、それを必要としている人とを、インターネットを介してマッチングすることで価値を生み出すものです。そのニーズは以前から存在していたと思われますが、ITテクノロジーの登場がその効率を劇的に高め、新しい便利なサービスとしてさまざまな分野で実用化されています。

 民泊のサービスはまだ登場まもなく、社会的に解決しなければいけない課題を生みながらも、旅を変革するツールとして今後も拡大し続けることが予想されます。世界の都市や観光地で民泊がスタンダードなサービスになりつつある状況から見ると、日本は明らかに後れをとっています。多くの自治体や観光産業がシェアリング・エコノミーを推進することに後ろ向きになっているからです。

 しかし、ITが旅行産業全体に大変革を起こそうとしているときに、それに抗うことは大きなリスクになります。当然あるべき便利なサービスが日本では手に入らないということは日本観光の競争力にとってマイナスとなります。