なぜチームは感情でつまずく?
解決するには「EQ」を高めること

 多くの人は「そんなこと分かっている」と思うかもしれない。しかし、感情が原因でつまずく組織は少なくないようだ。背景にあるのが、感情の複雑さだ。

「カリフォルニア大学のアラン・コーウェン氏の論文によると、人間が抱く感情の数は2185もあるといいます。しかも、その感情は絶えず揺れ動いていますよね。想像する以上に感情は複雑であり、同じ状況にあっても一人一人が抱いている感情が同じことはまれでしょう。しかしそれに気付かないリーダーは、メンバーの感情に配慮しない言動をしてしまうケースが多いのです。」

 仮に「不安」という感情一つを取っても、「胸騒ぎ」「気がかり」「ひやひや」といった軽い不安から、「やきもき」「おどおど」「心配」などの中程度の不安、「動揺」「痛心」「懸念」「恐れ」といった強い不安まで、さまざまな程度があるという。

「感情は多様だからこそ、リーダーはまず部下が抱いている感情を把握する大切さを知りましょう。また、自分の言葉が相手の感情をプラスにもマイナスにも変える可能性があると理解することが必要です」

 池照氏の著書には、感情によってつまずいたチームの実例がいくつか記されている。その一つを紹介したい。

 ある企業でWebマーケティング部門を率いていたAさんは、若手のBさんをチームリーダーに抜擢する。優秀なBさんだったが、本人はチームリーダーになることに不安を感じていたようだ。

 するとAさんは、しばらくして社外で知り合ったフリーランスのXさんに業務委託でチームに参加してもらうことを考えた。若いBさんのサポート役としてだった。