この2つのワクチンの「定期接種か任意接種か?」以外の大きな違いとしては、まず「持続期間」があります。23価のワクチンの持続期間は5年間なので、5年おきに接種をする必要がありますが、13価の持続期間は一生です。1回打てばそれで終了なので、13価のほうが楽です。

 また、肺炎球菌は93種類あるのですが、対応できる数も異なります。23価なら名前のとおり23種類ですし、13価なら13種類です。13価のほうが対応できる数が少なくなりますが、よく感染する種類の肺炎球菌はカバーできています。

 医者の立場としては「どちらも長所短所があるので、両方打つのが無難ですよ」が結論です。持病のある人は60歳から接種できる場合もありますが、基本的には65歳からの接種になります。ご自身や親御さんが該当する場合はぜひ接種しておきましょう。

帯状疱疹ワクチンを打つべき理由

 高齢者にオススメのもう1つのワクチンが「帯状疱疹(たいじょうほうしん)ワクチン」です。多くの人が小さいときに「水ぼうそう」にかかったと思いますが、あの水ぼうそうの原因の「水痘(すいとう)帯状疱疹ウイルス」をおさえるワクチンになります。

 このウイルスは、症状が治ってからも「神経におとなしく潜伏する」という特性があります。

 宿主(人間)が高齢となり、免疫機能が低下した際に再び活性化することがあるのです。このときは小さいときにかかった水ぼうそうとは違い、「帯状疱疹」という体や顔の一部の神経に沿った赤い発疹として出現します。顔に出ると目の周囲に感染し失明することがあり、脳へ直接感染することもあります。

 さらに厄介なのが「帯状疱疹後神経痛」と呼ばれる後遺症です。発疹がおさまってからも神経の痛みが継続することがあり、一生神経痛に悩まされるケースもあります。

 しかしワクチンを打つことで、ウイルスに対する免疫機能を強くし、再活性化のリスクを下げたり、罹った際に後遺症の神経痛の頻度を下げたりすることができます。カリフォルニア大学の研究でも、「高齢者がこの帯状疱疹ワクチンを打って発症率が約半分になり、後遺症の神経痛も約60%抑えることができた」というデータがあります(※2)

 人間であれば加齢による免疫機能の低下は避けられませんので、誰でも帯状疱疹のリスクは存在します。50代から発症率が上がってきますので、50歳を越えたらぜひ打ってほしいワクチンです。基本的には内科のクリニックで接種できます。親御さんや身近な人にぜひ教えてあげてください。

【出典】
※1 Catherine A Lexau,et al Changing epidemiology of i nvasive pneumococcal disease among older adults in the era of pediatric pneumococcal conjugate vaccine.JAMA.2005 Oct 26;294(16):2043 51.

※2 MNOxman,et al. A vaccine to prevent herpes zoster and postherpetic neuralgia in older adults.N Engl J Med. 2005 Jun 2;352(22):2271 84.

(本原稿は、森勇磨著『40歳からの予防医学 医者が教える「病気にならない知識と習慣74」』を編集・抜粋したものです)