また、脱派閥の総裁選挙になったというのが画期的な点だった一つですが、その流れをつくるきっかけとなったのは3期以下の若手が中心となった「党風一新の会」でしょう。

 脱派閥の選挙ということ自体が自民党にとっての良いイメージにもつながりました。派閥の拘束がなかったこと自体が岸田氏「だけ」に有利に働いたかというと、そういうわけではありません。例えば、派閥横断的に推薦人が集まったために野田聖子氏の出馬が実現しました。四人の候補者が立候補することによって全体的に総裁選挙が多いに盛り上がり、結果として新総裁(新総理)の下での政権運営にも大いにプラスになったことは間違いありません。

 その中心的な立場にあった福田達夫氏、武部新(あらた)氏も論功行賞としてどうなるのか、注目する点でした。福田達夫氏はまさかの大抜擢でした。総務会という自民党の最高意思決定機関のトップですから、これには度肝を抜かれました。

脱派閥と
党内融和のバランス

 二つ目は 党内融和です。

 脱派閥を訴えて新総裁となった岸田氏ですが、とはいえ、脱派閥の論理を振り切りすぎると、岸田政権は短命で終わってしまいかねません。従ってある程度は従来の派閥の意向をくみ取る必要があります。

 政治って難しいですよね。新しいことをやるにも急にかじを切ると必ず反動が起きるものです。だから、例えば麻生派だったらこの人、竹下派だったらこの人、という具合にバランスをとるのですが、そこは逆に各派閥が岸田氏側の意向をもとにチョイスするのです。

 過去にも安倍政権下で麻生派からある人物の入閣を推薦したときのこと。安倍政権時の官邸側はその人物ではなくて河野太郎氏を抜擢したのです。

 これには麻生派側は面食らったそうですが、麻生派から入閣したということには変わりないので文句は言えないのです。