相次ぐアスベスト飛散事故を引き起こす要因はいったい何か。その構造的な問題を、被災地の石巻市で起こったアスベスト飛散事故の背景を分析することで、あぶり出していく。第2回目は、発注をめぐるおかしな状況をお伝えする。
工事失敗後さらに高額受注
「典型例」と指摘された宮城県石巻市で8月末に起こったアスベスト飛散事故について、厚生労働省は「特殊事例」だと否定する。だが、取材を進めると、やはり典型例としか思えない事実に次々とぶち当たる。
今回は発注をめぐる問題に触れよう。現地には、除去工事で取り残してしまった吹き付けアスベストがいたるところに散乱している。11月1日、石巻市災害廃棄物対策課課長補佐の鎌田清一氏に連絡したところ、事故後の対応をこう話した。
「保健所や監督署に報告し、飛散防止剤を散布したうえで養生し、アスベストが飛ばないようにした。また周辺のモニタリングをした。保健所や監督署と今後の対策について協議してきました。すでに計画のOKが出たので、今年度中にアスベストを除去して、建物を解体します」
今度の除去工事はどこが請け負うのか尋ねると、細かい内容は担当者でないとわからないという。この時は担当者が不在というので、後に連絡することにした。
11月7日、改めて石巻市の担当者に今回の工事の受注業者を聞いた。
「前回除去したのと同じ会社です」
つまり前回の工事でアスベストを見逃し、解体工事で飛散させる原因となった環匠(埼玉県川越市)である(同社は見逃しを否定)。しかも随意契約で入札すらしていない。
受注額はなんと4995万9000円(すべて税込み)。前回の除去工事が3300万円。解体工事は解体735万円と別に見積もられており、単純にみて8000万円を1カ所の現場で受注したことになる。
これを聞いたとき耳を疑った。なぜなら現場はいくら元店舗でそれなりの広さといっても、200平米そこそこ。それにこれほど高額の発注があり得るのか。これまでの取材からアスベスト除去費用をそれなりに知っていることもあり、きわめて疑問だった。
しかも除去工事に失敗したにもかかわらず、さらにその現場の後始末を高い金額で受注する。そんなことが許されるのだろうか。